My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「怪我も完治してあるし、室長も雪を悪く扱いはしないである。ゆっくり休めば元気になるであるよ」
「…そうですね」
優しい笑みを向けるクロウリーの気遣いに、アレンも納得の笑みを浮かべた。
ノアが雪の前に現れたことは危惧することではあるが、ブローカーであったリッチモンドの大々的な競売イベントを考えれば、偶然に鉢合わせた可能性が高い。
雪がノアを呼んだ訳でも、ノアが雪を嗅ぎ付けた訳でもないだろう。
現時点でなら、コムイなら雪を危険因子とは見做さないはずだ。
(それに、雪さんには神田がいる)
雪は教団の敵ではない。
その信頼度の一つには、神田との関係性もある。
アレンにとっては気に喰わないことだが、その関係性が雪を教団に結び付けているのなら大事なことだ。
「さて、私達は報告書をまとめましょうか」
「はぁ…やっぱりするんですね。気が重いなぁ」
「今回は分厚い報告書になりそうである…」
「というか神田は何処行ったんですか。一人だけ逃げるなんて狡いですよ」
「どうせ雪の処でしょ。戻ってきてやらせればいいし。今は大目に見てあげて、アレン君」
「でもなぁ…」
想像する間でもなく、今回は報告書一つまとめるのも一苦労しそうだ。
教団に帰還して早々、いつの間にか姿を消していた神田に顔を顰めつつ、アレンは愚痴を溢した。
「やっぱり気に喰わない」