My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
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「久しいのう、リー室長」
「貴方は少しも変わらないですね、校長」
共にソファに腰を下ろし、旧友との再会を喜ぶかのように言葉を交わすコムイとダンブルドア。
明朝、黒の教団に帰還したアレンは、すんなりと警備を通り司令室に招かれた魔法使いの存在に舌を巻いた。
どうやら偉大な魔法使いは、ヴァチカン組織にも通じていたようだ。
「事の内容は、先にハワード・リンク監査官からの報告で概ね理解しています」
「それは助かる。じゃがウィリアム・リッチモンドの件は、今回は我らの管轄だ」
「ええ、そのようですね。彼への対処は、我々よりも魔法省の方が的確でしょう。従って───」
ふと話を止めたコムイの目が、興味深そうに見ていたアレン達へと向く。
そこに穏やかに微笑み返すと、コムイは司令室の出入口へと促した。
「君達は下がっていいよ。報告、ありがとう」
「───"込み入った話をするから席を外してくれ"って言われた気分でしたね」
「実質そうなのでしょう。今回のことは黒の教団だけの問題ではない。予想より遥かに大きな相互関係が動いているように思えます」
「リンクもやっぱり知らなかったんだ?魔法界のこと」
「公でその名称を安易に口にしないことです、ウォーカー。忘却術の対象者となりますよ」
司令室を後にしたアレンは、筋肉を解すように伸びをしながら大きく息を吐いた。
中央庁の出であるリンクも魔法界の存在は知らなかった。
恐らく認知しているのはコムイとほんのひと握りの上層部だけなのだろう。
エクソシストであるアレン達も、魔法界から見ればマグルと変わらない。
魔法界に触れたマグルは忘却術で記憶を抹消される決まりだが、今回はダンブルドアの厚意で免れた。
ただし魔法界のことは他言無用しないこと、それが絶対条件である。
「兄さんも大変なのよ。雪のこともあるし…」
心配そうな表情で続けたのはリナリー。
その名を耳にしたアレンもまた表情が陰る。
「雪さん、大丈夫かな…あんまり顔色よくなかったけど」
教団への帰還の際に、アレンはようやく目覚めた雪と対面することができた。
どことなく、いつもより覇気のない顔をしていた彼女を思い起こす。