My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
同じ女として不安を抱えているのだろう。
そんなリナリーの強張った表情に、雪はゆっくりと息を吐くと微かに笑みを浮かべた。
「大丈夫。リナリーの心配するようなことは、起きてないよ」
間接的にだがそれを否定する雪に、ようやくリナリーにもほっと笑顔が戻った。
「よかった…あ、でも一応、と思って。アレン君達はまだ待機させてるの。神田もね、様子を気にしてたみたいだけど。とりあえず待っててって」
「そうなんだ…じゃあ、皆此処にいるの?」
「うん。皆無事だよ」
「というか、此処何処…?」
「此処はリヴァプールだよ。私達が借りてたホテルとは別の、普通のホテル」
「そうなの?でも」
「ユキ!」
「起きたんだって!?」
再び会話を遮るようにして部屋に飛び込んできたのは、今度は二つ。
燃えるような真っ赤な赤毛の二つの顔は、雪を見ると全く同じ笑顔を浮かべた。
「体の調子はっ?」
「よかった!一時はどうなることかと思っ」
「ちょっと待って二人共!私が様子を見てくるからって言ったじゃない!」
掴み掛からん勢いでベッドに齧り付く二人に、眉をつり上げたリナリーが割り込む。
「言ったっけ?そんなこと」
「あれはカンダ達にだろ?」
しかしきょとんと互いの顔を見合わせた瓜二つの顔は、あっけらかんと首を傾げる始末。
出会った時から変わらない双子───フレッドとジョージの雰囲気に、毒気を抜かされたように雪は肩を下げ頬を緩めた。
「いいよリナリー。私は大丈夫だから」
「でも雪…」
「流石我らが同盟仲間」
「とにかく無事でよかったよ」
雪の笑顔を前にすればリナリーも強くは返せず、ここぞとばかりに双子が再度ベッドに詰め寄る。
しかし安堵と共にフレッドの手がぽふりと雪の肩に置かれると、途端に雪の顔色が変わった。
びくりと体が跳ねて、息を詰まらせる。
「ユキ?」
「っなんでもない」
覗き込むフレッドの顔に、目を伏せて首を横に振る。
そんな雪の反応を前に、リナリーは眉を下げて呟いた。
「…やっぱりもう少し休んだ方がいいわ」