My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「あの…ダンブルドア、さん」
「アルバスで構わんよ」
「じゃあ…アルバスさん。あの…手当て…ありがとうございました」
傷一つない綺麗な体に戻れたのは、彼の魔法のお陰なのだろう。
頭を下げる雪に、しかしダンブルドアは首を横に振った。
「儂が治したのは、その気管支だけじゃよ。他はフォークスに癒してもらった」
「フォークス?」
「君の後ろにおる」
その目に促されて振り返れば、ベッドボードに停まっている真紅色の鳥。
ダンブルドアに応えるかのように、小さな頭を雪へと寄せる。
「フォークスは不死鳥でのう。その涙には傷を癒す効果がある」
「え…じゃあこの子が…」
「儂はリヴァプール大聖堂とリッチモンド邸の後始末に回っておったので、君のことはフォークスに任せておいた」
ダンブルドアの口から出た建物名に、はっとした。
朧気だった記憶が引き戻される。
「アルバスさん、ウィリアム・リッチモンドという男は…っ…その…」
「スクイブじゃろう?」
「!」
「心得ておる。君達のお陰で太った婦人も取り戻せた。ありがとう、雪」
「じゃあ…やっぱり、あの絵画は…」
「我々の世界が、どうやら君達の世界に迷惑を掛けたようだ。その怪我の手当ても建物の後始末も、儂らがやらねばならないことじゃった。なので礼など要らんよ」
「雪!」
バタン!とけたたましい音を立てて、会話を遮るように開くドア。
飛び込んできたのは、ティムキャンピーとくろすけを連れたリナリーだった。
「目が覚めたのね!よかった…!」
「リナリー…」
「中々起きないから心配したのよ…っ本当によかったっ」
同じ教団の仲間の姿に安堵はしたものの、涙声混じりに手を握るリナリーに雪は戸惑いの表情を浮かべた。
杖を仕舞いながら椅子から腰を上げたダンブルドアが、穏やかな声で補足する。
「君は丸一日眠りについておったんじゃよ。雪」
そこでようやく、雪は自身の事態を悟ったのだった。