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My important place【D.Gray-man】

第48章 フェイク・ラバー



鳴き声を上げるでもなく大人しく見下ろしている鳥の背中から、ぴょこりと何かが盛り上がる。
丸い大小のシルエットが二つ。
あ、と声にならない反応を示す雪の布団の上に、ぽちょんと二つのシルエットが落下した。



「ガ!」

『ピ!』



パタリと羽を羽撃かせ声を上げたのは、見慣れた二匹のゴーレム。



「ティムっくろすゲホッ!」



アレンの相棒ティムキャンピーと、神田の通信ゴーレムのくろすけ。
しかし名を呼び終える前に、喉が張り付くような感覚に雪は咳き込んだ。
喉の奥がヒリヒリと痛む。



「ごほっゲホ…!」

「喉は大層深手を負っていたからのう。気管支もやられておったんじゃな」

「!」



その場に人がいるとは思わなかった。
驚き顔を上げた雪の目に、当然のように其処に立っていた老人が歩み寄る。
長い髭にローブのようなマント姿は、見覚えがある。



(あの猫のお爺さんだ)

「フォークスに癒しと見張りを頼んでおったが、少しばかり足りていなかったんじゃのう。どれ」



老人が懐から取り出したのは、見覚えのある杖だった。
フレッドとジョージが持っていたものとデザインは異なるが、同じ力を持つ物であることは雪も理解した。

す、と雪の首に向けられる杖の光。
喉元を優しく包むと、瞬く間に喉の痛みが消えていく。



「これで心置きなく喋られるだろう。どうかね?」

「…貴方は…魔法界の…?」

「ふむ、大丈夫そうじゃな。主人に知らせて来て良いぞ」

「ガァッ」

『ピピッ』



老人の声掛けに、ティムキャンピーとくろすけが我先にと部屋の外へと飛び出していく。
ベッドと机と椅子が置かれた、必要最低限の物しかない簡素な部屋。
見知らぬそこは、雪達が任務で寝泊まりしていたホテルではない。



「此処は…私、は…?」

「順を追って話そう。とりあえずはどうかね、温かい飲み物でも」



机に置かれたポットを手に問い掛ける老人に、しかし雪は首を横に振った。



「…いえ」



今は喉に何か通したい気分ではない。
痛みは退いたが、まだ自分の体ではないような錯覚がする。
それは一時的にでもノアの力を解放した為なのか。

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