My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
───己ハオ前ダ
───認メロ
───受ケ入レロ
───サスレバ〝力〟ハオ前ノ物トナル
躊躇した手は半端にしか伸ばせなかった
後の距離を縮めたのは、白くぼやけた掌の方
触れたそこから激流のように、言いようのない激しい感情が渦巻いて
その時には、もう遅かった
私の視界を遮るように覆う、真っ白な手
にんまりと裂けた口が開いて、闇の穴のようなものが見えた
───ナラバソノ身体ダケ明ケ渡セ
───己ガオ前ノ代ワリヲシテヤロウ
拒否なんてできなかった
白い手に顔を鷲掴まれて、すぐ目の前に迫る奇妙な白い影
がばりと開いた大きな口に呑み込まれて
視界は真っ白に塗り潰された
───オ前ノ代ワリ二、全テヲ怒リデ焼キ尽クシテヤロウ
───今ハマダ
白い影に呑み込まれていく
私の内に浸透していく
それは得体の知れない感覚なのに
恐怖の中に宿る、奇妙な安心感
───イズレオ前ノ全テヲ
───己ガ食ラッテヤル
最後に聞いたのは、腹の底を打つような
そんな嗤い声だった
───忘レルナ
───オ前ハ己ダ
閉じていた雪の瞼が薄らと開く。
最初に見えたのは、見知らぬ天井とぼんやりとした塊だった。
焦点が合わないのは向き合うには近過ぎるからだ。
しかしそれに気付く前に、目の前の塊が更に視界いっぱいに広がった。
「っ?」
すり、と頬に感じる温かく柔らかい何か。
反射的に顔を強張らせれば、目の前のそれが距離を退く。
視界に輪郭が入る大きさになってようやく、それがなんなのか理解できた。
「…とり…?」
其処にいたのは、見たこともない一羽の鳥だった。
白鳥程の大きさの真紅色の鳥。
白鳥とは違い鉤爪のある足に、鋭い嘴。
それらは金色に輝き、小さな頭には賢そうな黒い両眼が付いている。
纏う羽毛は赤と金の滑らかなもので、尾は孔雀のように長い。
見惚れそうな程に美しい鳥だった。
それが雪の寝ているベッドボードに足を掛け、じっと顔を覗き込むようにして静かに停まっている。