My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
──────…奴ヲ許スナ…
また、だ
幾度となく聞こえてくる呼び声
それは呪いのように、体の内部を侵食していく
許すなと囁かれる度に怒りが込み上げて
奴らを殺さねばと衝動が走る
私が私じゃなくなってゆく
千切れた絶望しかない記憶の中で
どうにか縋れるものを見つけられたはずなのに
それではないと誰かが否定する
真実を見ろと誰かが諭す
…違う
私の手は、あの人を守る為にある
私の声は、あの人を呼ぶ為にある
私の目は、あの人を見つける為に
私の生きる道は、あの人と歩む道だ
───憎悪ヲ忘レルナ
───怒レ
───憎メ
───全テヲ破壊シ尽クセ
いつもは単語の断片だけだったものが
呪いを掛けるように囁いてくる
知らないのに知っている気がする
聞きたくないのに止められない
どんなに拒絶しても、体の内に流れ込んできて
私の底から別の何かが満たしていく
残像のような人の顔が、幾つも浮かんでは消えていく
泣き叫ぶ顔
憤怒する顔
嘲笑う顔
やがてぼんやりと目の前に佇んでいたのは、人形のような白い人影だった
裂けた口でにんまりと笑って、手を差し伸べてくる
見慣れないものは恐ろしく感じるはずなのに
なんだか懐かしさを感じて
それがなんだか哀しくて
自分の感情の意味もわからずに
ただその手を取ることには、底知れない恐怖を感じた
取ってしまったら、終わりだ
私が私でなくなってしまう
…そんな、気がして