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My important place【D.Gray-man】

第48章 フェイク・ラバー



声の主を捜すより先に、ティキは異変に目を止めた。



「「!?」」



ティキだけでなく神田も目を見張る中、二人の視線はただ一つに向いていた。
声を発した主ではない。
ティキの体からぽふりと舞う、透明な一つの泡に。



「なん、だ…?」



己の手を凝視するティキの目に、ぽふりぽふりと浮かぶ無数の泡。
宙へ浮かんではぱちんと消えて、気配も残さない儚さは、まるでしゃぼん玉のようだ。
それと同時に、頭の奥がすーっと冷えていくように、感情の起伏が静まるのをティキは感じた。



「ほっほっほっ、どうやら落ち着いたかのう?」



泡がぱちんと弾けるにつれて、ティキの体を覆っていた黒炭の気配も消えていく。
触手のような禍々しいオーラは空気中に溶けるように消えて、穏やかな笑い声が響く。



「邪魔をする気はなかったんじゃが、これは儂らの問題でもある。今回は目を瞑ってくれんかの」



にこやかな優しい笑みを浮かべ歩み寄るのは、後方にいたはずのダンブルドアだった。
和解をしようとばかりに両手を広げる姿に、しかしティキは不快な表情を返した。



「悪いけど、爺さんにも構ってる暇はねぇんだよ。邪魔するな」



いくら魔法で落ち着かせようとも、人の感情まで簡単にコントロールできる訳ではない。
特に体に変化を起こさせる程の感情なら、尚更だ。
その結果は読めていたのか、残念そうに肩を下げながらもダンブルドアは大人しく身を退いた。



「ではそちらが退かぬのなら、こちらが退こう。今回は両成敗といこうじゃないか」

「何言って…?」



す、と杖を上げるダンブルドアの仕草に、ティキの目が怪訝なものへと変わる。



「"Avis"」



ダンブルドアが一言呪文を唱えれば、途端に杖の先から鳥の群が飛び出した。
視界を遮る程の大量の鳥達の羽撃きで、目も耳も機能を奪われる。



「きゃあッ?」

「これは…ッ?」



鳥の群はリナリーやクロウリー達エクソシストも、リンクやトクサ達中央庁の者も覆い尽くしていく。
視界を黒々と塗り潰していく鳥の群。



「イデッ!なんだこのクソ鳥…!」

「ヒ!痛い!ヒ!!」



ギャアギャアと鳴く鳥に合わせて、ぎゃあぎゃあと喚くジャスデビ。

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