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My important place【D.Gray-man】

第48章 フェイク・ラバー



振り下ろした腕を左手のイノセンスで受けたアレンが、圧された体を傾ける。
ただの腕だと言うのに、鉄のように硬いティキの黒い腕には見覚えがあった。

ノアの方舟で、アレンの退魔の剣を受けて一度は失ったと思われたティキのノアメモリー。
しかしそれを引き金に、突如黒騎士のような姿へと変貌したティキは、並々成らぬ力を見せ付けアレン達を圧倒したのだ。
全身真っ黒な鎧と肌を持った、到底人とは思えない異様な姿をしていたティキ。
今はまだ人の姿を保っているが、腕はその時のものと酷似していた。



「神田ッ早く、雪さんを!」

「今は少年と遊ぶ気ないんだよね」



淡々と告げるティキの声が更に低くなる。
増す殺気に背筋を凍らせると、アレンの視界の隅を何かが掠めた。
ゴッ!と鈍い音が脳内に響く。
同時にアレンの視界がぐにゃりと揺れた。



「アレン君!」

「っ…」



リナリーの悲鳴のような声も何処か遠くに聞こえる。
ふらつく足でどうにか踏ん張るアレンの口元に、じわりと滲む赤い血。
ティキの肩から伸びる黒い触手のようなそれが、死角からアレンの顎を狙ったのだ。
不意打ちに強打したアッパーカットは脳天を揺らし、アレンの体を無防備なものへと変えた。

しかしそこにティキは決定打を下さなかった。
彼が冷たい目を向けているのは、ただ一人。



「…お前ら、雪を守ってろ」

「え?相手するのかっ?」

「あれをっ?」



フレッドとジョージに抱いていた雪を預けると、視線を受けて神田もまた六幻を構えた。
何かと軽口を叩いていたティキが、無駄なことを一言も発しない。
それだけで先程の遊びのような、余裕はないことを悟る。
次こそは確実に残りの心臓を握り潰しに来るだろう。
いくら死なない体であっても、一度命を落とせば再生には時間が掛かる。
その間に雪を奪われる可能性は高い。



「返り討ちにしてやる」



何よりティキへの奇妙な不審感を神田は感じていた。
今此処でやらねば、と危機感が背を押す。



「………」



無言で対峙するティキの黒い肌が、目元まで広がっていく。
いつ奇襲に出るか。
張り詰めた空気の中で静寂が訪れた瞬間だった。






「"Scourgify"」






その場に不釣り合いな、穏やかな声が響いたのは。

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