My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
殺伐とした空気が張り詰める。
黒炭のような気配を纏わせ殺気立つティキに、あのシェリルでさえ一瞬躊躇した。
「待ァてゴルァアア!!!」
「デロ達の相手をしろクロスの弟子ィイ!!」
その緊迫した空気を壊したのは、派手な音を立てて大聖堂に乗り込んできた二人。
ティキやシェリル同様、ボロボロの正装姿で銃を構える双子のジャスデビだった。
「待ちなさい!貴方達の相手は私だって言ってる、でしょッ!」
「キャー!!」
「危ねェ!!」
更に立て続けに賑やかな音を立てたのは、ダークブーツで双子の着地点に舞い降りたリナリー。
舞い降りると言えば聞こえはいいが、イノセンスを発動したダークブーツで踏み鳴らせば、間一髪避けた双子の足場を一度で粉砕した。
「私の出番は無さそうだな…」
「全く…ッウォーカー!急に突っ走るのは止めろと何度言えば…!」
続けてクロウリーとリンクも姿を見せる。
新たな敵の出現にシェリルは目を見張るものの、慌てた様子は見せなかった。
しかし状況を冷静に判断し、危機感は覚えたらしい。
「こんなにエクソシストがいたなんてね。ジャスデビじゃ抑えられないはずだ」
「ああん!?できるわこれくらい!!」
「デロ達を舐めるなっての!!」
「そんな姿で言っても説得力ないよ。それよりティッキーを落ち着かせる手伝いをしてくれないかな?このままじゃ方舟の二の舞だ」
「あ?…うげ」
「ヒ…ティキの奴キレてない?」
「だから頼んでるんだよ。こんな人数のエクソシスト相手じゃ、僕らも無傷では───」
首を横に振るシェリルの髪が、ふわりと靡く。
風を起こした本人の姿は既に其処にはなく、ガキィン!と金属がぶつかり合う音が空気を裂くように響いた。
「ぐ…ッ!」
「退けよ少年」
「嫌、です…!」
間合いを詰めたティキの一撃を受け止めていたのは、アレンだった。
瞳孔を完全に開ききったティキの視線を至近距離で受けつつ、それでも神田と雪を守るように盾にした己の体を退く気配はない。