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My important place【D.Gray-man】

第48章 フェイク・ラバー



「ほんっと、今日は色々あり過ぎて感情が追い付きそうにもねぇわ」

「なら一人余所で感情の整理でもしてろ」

「冷たいねぇ、セカンドくん」



雪を抱いたまま六幻を構える神田に、ティキは微かに口角を緩め笑った。
それは笑みと呼べるのか躊躇する程、凍る微笑だった。



「(どっちがだ)…これ以上此処にいる意味はない。撤退するぞモヤシ」

「モヤシじゃありません!ってそれより雪さんは…ッ」

「気を失ってるだけだ」

「何をどうしたら気なんて失うんだよ。雪に何をした?」

「…何言ってやがる…こいつに何かしたのはテメェらだろ」



凍るティキの微笑と等しく、周りの温度を下げたのは神田の静かな殺気。
現状を全て把握している訳ではなかったが、ノアに狙われたが為に雪のノアメモリーが暴走したのは、トクサを通じ知っていた。
彼女の今の有様は、十中八九ノアによるものだ。

雪を抱く手に自然と力が入る。
その様を見るティキの顔が、不快なものへと変わる。



「これ以上言葉は不毛だな。とりあえず雪を返して貰うよ」

「寝言は寝て言え。ハナからこいつはテメェのものじゃねぇ」



一触即発。
交わす言葉は静かなものだが、張り詰めた空気が互いの間に生まれる。
いつ戦闘が始まっても可笑しくない状況下で、先に動いたのは神田でもティキでもなく。



「はぁ、やれやれ…そこまでだよ」



全く別の第三者だった。



「これ以上此処で暴れるのはお勧めしないね」



抉れた幾何学模様の床を踏む、煤汚れた革靴。
戦闘の末に破れ廃れ無残な状況となった、自身のスーツの土埃を叩く。
そうして対峙する二人の間に歩み寄ったのは、ノア側であるシェリルだった。



「何やってんのシェリル。雪を頼んだはずだろ」

「中々に厄介なことがあってね。話せば長いんだ」



両手を軽く挙げて戦闘の意志がないことを示すシェリルに、マクゴナガルもそれ以上杖を振ることはなかった。
不満を露わにするティキにすまないと謝罪しつつ、それでも止めるようにシェリルが向き合ったのは、神田ではなくティキだ。

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