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My important place【D.Gray-man】

第48章 フェイク・ラバー



✣ ✣ ✣ ✣


「全く、冗談じゃない…!」



フラッシュのように激しく点滅する光の中で、シェリルは苦々しい表情を浮かべた。
すっと音も無く懐に飛び込んでくるのは、その光の原因である女性。
彼女が細い腕を振るだけで、雷のような衝撃波が幾何学模様の床を抉り大聖堂を破壊する。

蛇のようにうねる電撃を紙一重で避けたシェリルの眼下に、無表情で対峙する雪の姿が映る。
体中に電流らしき高圧エネルギーを迸らせているというのに、とうの本人は感情の一つも見せてはいない。
左右に分かれた瞳の色は、右目はノア独特の金色の光を宿しているというのに、左目は東洋人の持つ暗い色のまま。



「本当に異色だね、君は」



半端な姿をしておきながら、放つ攻撃の一つ一つが並ではないのだ。
思わず苦々しい笑みを浮かべてしまう程に、滑稽でありながら腹の底からは笑えない。
どんなにシェリルの能力で手足を縛ろうとも、雪の肌を纏うエネルギーが跳ね返してしまう。



(僕の能力は言わば特殊変化型。反してラースラの能力は、ノアの中で最も攻撃特化型と謳われても可笑しくない能力だ)



シンプルな業だからこそ弱点が少ない。
力だけでここまで押し切るラースラの能力は、まさにノアの怒りと言うにふさわしい。



「どうやら僕らは相性が悪いみたいだね…(能力だけでお釣りがくるなんて…厄介なメモリーを厄介な相手に持たせたものだよ)」



ただし、そこに突破口がない訳ではない。



(その分、本人への負担も大きいけれど)



シェリルの目が細まる。
視線の先は、イノセンスを縛り付けられている雪の首に向いていた。
強く白い光を放っている小さな十字架は、見間違えようのない確かなイノセンスの原石だ。
ノアにとっては剥き出しの猛毒そのもの。
雪のノアメモリーに反応して力を解放しているからこそ、容赦なく雪の首はイノセンスに焼かれていた。

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