My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
───キンッ
密度の高い物質が弾け合う。
微かな火花を散らし、暗い広間に光を灯す。
「やっぱ速いね…ッ」
神田の掌で自由自在に撓る六幻は、ティキに余裕を与えなかった。
四方から食人ゴーレムのティーズに襲わせても、秒で斬り捨てられる。
アレンのような自在に操れる鋼鉄のマントは持ち得ていないものの、彼より一歩先を行く神田の攻撃は充分に厄介なものだった。
「あいつを何処へやった!」
「だからあいつって誰。名前教えてくんないと、おにーさんわかんないから」
「惚けんなよ、テメェが連れてったんだろ…!」
連れ出した者なら憶えはある。
きょとんと目を瞬くと、ティキは六幻の刃を腕に貼り付けたティーズで受けながら、意外そうに呟いた。
「もしかして彼女、教団の人間だった?…あちゃ」
貴族として舞踏会に参加していた為に、部外者である発想はまるでなかった。
しかし目の前の神田のドレス姿は、舞踏会で一度見かけている。
美女と思っていたこの神田と踊る、男装した彼女の姿を思い出せば黒の教団と繋がるだろう。
思わず自分の落ち度に唸る。
「それは悪いことしたな…(半分手ぇ出しちまったし)」
「何しやがったッ」
「いや、結果的には未遂…ぅおッ!?危なッ」
顔面に突き込まれる刃を、寸でのところで避ける。
会話はできるものの、防戦一方。
じりじりとティキを追い詰めていく神田の横を、二つの影が足早に通り過ぎた。
「カンダ!ここは僕達が行くから!」
「ユキは任せて!」
杖を構えてティキが出てきた扉へと走るフレッドとジョージ。
その口から出た名に、ぴくりとティキの動きが止まった。
「だからそっちは頼んっうわあッ!?!!」
「フレッド!」
突如として周りを羽ばたいていた無数のティーズが、一斉にフレッドとジョージへと牙を剥く。
蝶々のような風貌ではあるが、中心部には骸骨を模した顔がある不気味なゴーレム。
骨の牙を剥き食らい付くティーズ達に、転ぶように双子は扉から遠ざかった。
「……今なんて?」
先程まで飄々としていたティキの声に、静けさが宿る。
「もしかしてそれ、月城雪のこと?」
振り返り冷たい視線で問い掛けるティキに、双子は思わず息を呑んだ。