My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「答えろよ」
沈黙を作る双子に、僅かにティキの声に低さが増す。
しかしその解答を待つ前に、神田が横から斬激を打ち込んだ。
「だったらどうした」
六幻の刃を片腕で受け止めながら、ギリギリと競り合う。
六幻越しに見た射抜くような神田の視線と言葉を受け止めて、ティキは問いの解答を確信した。
同姓同名の人間など、早々いない。
それも日本名の女性など、この英国の地で出会うなど限りなく無に等しい。
「…へえ」
ティキの瞳孔が開き、口角がつり上がる。
狂喜めいたその笑みに、神田の背にぞくりと冷たいものが走った。
飛び退き距離を取る神田に、ティキは後追いもせずその場に立ったまま。
クツクツと喉の奥で笑う。
「こういうのなんて言うんだっけ。偶然にしちゃ出来過ぎだよな…必然ってやつ?」
「何意味のわかんねぇこと言ってやがる」
「俺もさぁ、セカンドくんから返してもらいたいもんがあるんだよね」
両手を広げるティキの周りを、ティーズ達が舞う。
一見して優美な光景にも見えるが、中心で笑う男の表情は狂喜だ。
「俺の家族」
「……テメェの家族なんか知るか」
「さっきのセカンドくんの言葉返していい?しらばっくれるんじゃねぇよ」
ぴり、と冷たい殺気が神田の肌を打つ。
「でもいいや。気付かなかったのは癪だけど、ちゃんと返してもらえたらしいから」
「誰が渡すなんて言った。雪を返せ」
「いつからセカンドくんのもんになったわけ?所有者振るなよ」
互いの間に生まれる殺気が、室温を下げていくようだった。
笑みは浮かべているものの、ティキの声は底冷えするように冷たい。
「雪の帰る場所が教団の何処にある?勝手なセカンドくんの都合で、そこに繋がれてるだけだ。雪の首を締める鎖が見えないのかよ」
「あいつはなりたくてノアになった訳じゃない。だから自分の意志で教団に残った」
「俺もそうだけど?ジャスデビだって、俺らの家族は皆望んでノアになった訳じゃない。それでも受け入れたのは、そこが帰る場所だと理解したからだ」
それは教団の誰にも理解し得ないもの。
ノアにしかわからない絆だ。