My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「こ、この競売の主催であるリッチモンド、なら、女を知ってるはずだ…!」
「何言ってる。あいつなら今は表の舞踏会に浸ってる」
「それは替え玉だ…!我々があいつに加担して、毎回この場を設けてきた…ッ」
「…へえ。ならその本物のリッチモンドとやらは何処にいるんだ?」
「それなら此処に…ッ…此処、に…?」
「何処だよ」
「い、いるはずが…」
「いねぇな」
チキリと六幻の刃が光る。
次は己の番だと戦慄するAKUMAの眼下に、白刃を向けた。
────ドゥッ!
「ぐっ…ギャアァアア!」
「な、なんであるか…!?」
しかしAKUMAにとどめを刺したのは、神田の六幻ではなかった。
突如何処からか飛んできた巨大な炎の玉が、神田とAKUMAを呑み込んだのだ。
「カンダ!大丈夫かッ!?」
「煩ぇ聞こえてる」
ジョージの問いに手短に返す神田の姿は、炎の中にはなかった。
轟々と燃えているのはAKUMAだけで、神田には燃えカス一つ付いていない。
炎の玉が衝突する前に回避した舞台の上から、攻撃された方角に目を向けている。
「ヒッ!避ーけらーれたぁー!」
「オレらが席外してる間に、ナニ楽しそうなことしてんだよォ」
暗い通路の奥から、舌触りの残りそうな少年の声が二つ響く。
暗がりから生まれるように姿を現したのは、タキシードにドレス姿と正装した、黒短髪と金長髪の少年達だった。
巻いた金髪を揺らす少年はドレス姿をしていたが、その口から漏れる声は少女のものではない。
ゆらゆらと二人が揺らす手の先には、リボルバーの付いた拳銃。
それに見覚えがあった者が、この場には一人だけいた。
「…あれは…」
見開く目で呟くクロウリーの声は、誰にも届いていない。
「ヒ?見てデビット。相手、女だよ」
「あ?ンだよ女かよ、張り合いねーな」
「…なんだテメェら」
「「声低ッ!」」
六幻を向け殺気立つ神田に、尻込みもせず息ぴったりに驚き合う。
「なんだあいつ男かよ!?」
「カッコは女なのに!?」
型はまるで違うが、掛け合う言葉はフレッドとジョージのように流れ出る。
まるで双子のようだった。