My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
ビリビリと人間の皮膚を割いていくAKUMA達に、その場の殺気が高くなる。
気配に鈍感な双子でもわかる程、圧迫する空気に神田以外の全員が息を呑んだ。
「神田!此処には一般人もいるである…!」
「そこの似非魔法被れと人間はお前らで保護しろ」
「似非魔法被れ…?」
「それって僕らのこと?」
双子の問いには耳を貸さず、発動させた六幻の刃を擦れるようにして二本に分離する。
両手に刃を持ち構えると、神田の目は鋭さを増した。
「他は全部、俺の獲物だ」
その言葉が合図だったかのように、転換(コンバート)したAKUMA達が一斉に神田へと狙いを定める。
目の前のAKUMAの群へと怯むことなく、神田も床を蹴り飛び込んだ。
「獲物って何。ハンターみたいな目してたよ彼」
「うわあ…切り込み役ってのは正論だね。頼もしいことで」
AKUMAの血飛沫が舞う中心で、常人の目では追いつけない速さで二本の刃を振るう。
ドレス姿であることを物ともせず切り込む姿は、女装していることもあってか優雅な舞いのようにも見える。
しかししていることは、六幻でAKUMAの頭蓋を割り四肢を切断し首を吹き飛ばすもの。
美醜混じる光景だった。
足元にまで飛んでくるAKUMAの血飛沫に、双子も思わず後退る。
「仕方ないですわね、あの人間達はわたくしが保護しますわ。マホウモドキを頼みますわよ」
「待ってマホウモドキって」
「種別名みたいに僕らを呼ばないでくれるかな、そんな生き物いないから」
クロウリーに双子を任せたテワクが、舞台へと向かう。
AKUMA達は神田へと群がっている為、テワクやクロウリーにその毒牙が掛かることはなかった。
「二人共、AKUMAの血は有害であるから触れないように。私の背後にいるである」
「君は大丈夫なのかい?えっと…クロウリー?だっけ?」
「それにあのカンダって人間も。というかあれ人?」
「私と神田はAKUMAウイルスに触れても平気である。それこそニンゲンモドキかもしれないであるな」
苦笑いを浮かべるクロウリーに、双子は目を合わせただけで否定はしなかった。
恐らくこの場で常人と呼べる人間(マグル)は、テワクが助けに行った鎖に繋がれた者達だけなのだろう。