My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「さて、お次は若い青年です。歳は17〜18。張りのある肌、モスグリーンの瞳、プラチナブロンドの髪。観賞用にしても良し、玩具用にしても良し、勿論食肉としても活用頂けます。さぁ、まずは20ポンドから!」
「…なんであるか、これは…」
「聞くだけですと、何か金銭で賭けているようですわね…」
「何かも何も、人を紹介してないかあれ…」
「食肉って言ってない?あれ触れたらアウトなやつじゃない?」
「…成程な」
身を屈め顔を床に付けて、段幕の隙間を覗くクロウリー達。
その隣で、唯一中を確認もせず突っ立っていた神田が一番に答えを出した。
「通りで嫌な気配だった訳だ」
「? 通りってなん───」
ヒュッと空気を切る音。
微かにそんな音をフレッドの耳が拾った、刹那。
ばらりと目の前に垂れ下がっていた分厚い段幕が切り裂かれる。
ばらばらと四方に切り裂かれただの布と化したそれが床に散れば、目の前は一気に開けた。
開けた眼下にいたのは無数の貴族達だった。
唯一照明が当てられている舞台には、鎖で繋がれた人間が並ばされている。
触れてはならぬものであることは、一目で皆理解した。
「ちょっ…!今触れたらアウトって言ったよね!僕言ったよね!?」
「何して…!」
「同じ屋敷内なら俺らも招待客だろ」
顔を青くする双子の横を通り抜け、身に付けていたマスカレードマスクを剥ぎ落とす。
神田の指が黒塗りの六幻に添えられると、忽ちにそれは輝く銀色の刃へと変わった。
「ただし相手は人じゃなくAKUMAらしいが」
「アクマ?って、それ、あの怪物?」
「どうみても此処にいるのは人間じゃあ…」
「これだけ殺気付いた面で人間をカモにしてりゃ、皮を被っていようがいまいが関係ねぇよ」
ピリピリと殺気立つ空気。
それは神田の飛ばす鋭い威圧だけではなかった。
欲望でギラついた目を向けてくる貴族達に、クロウリーとテワクもまた表情を変えた。
この殺気立つ空気なら、馴染みがある。
「モヤシ、今なら暴れてもいいぜ」
『え?何かあったんですか?』
「あれは…エクソシストじゃあないか」
「エクソシストだと…?」
ゆらりゆらりと体を揺らし、貴族達が席を立つ。
その度に膨らむ殺気に、神田はチキリと六幻の刃を傾け構えた。
「宴の第二幕だ」