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My important place【D.Gray-man】

第48章 フェイク・ラバー



「神田っ待つである、先を突っ切ると危険である…っ」

「お前らがさっさとついて来い」



薄暗い道を、夜目の利く猫は足音を立てずに迷わず進む。
その後を追う神田もまた、足音一つ立てず進んでいた。



「聞く耳持たずですわ」

「神田はアレンと同じに、真っ先に敵陣に突っ込む切り込み役のようなところがあるから…」

「切り込み役?なんですのそれ、迷惑そうですわね」

「…だが、大変頼もしいところもある。それだけ見合った腕が神田にはあるのだからな」

「ああ、そういうイメージなんかあるよ。彼、一番に手が早そうな感じ。暴力的な意味で」

「ユキの柔軟さがあってこその相手だな。"ルーモス"」



苦笑混じりに神田をフォローするクロウリーに、賛同したのはテワクではなくフレッドとジョージ。
小さな声でフレッドが呟けば、杖の先が僅かな光を灯した。



「二人はあの絵画を取り戻しに来たのであろう?置いてきてよかったのであるか?」

「それはそうなんだけど…それだけじゃ事は穏便に運びそうにないからね」

「それにユキには婦人のことで借りができたし。同盟仲間なんだ、見捨てる訳には」

「シッ、黙れ」



やがて見えてきたのは、分厚い段幕に囲まれた道。
其処へ踏み込んだ途端、神田は急に足を止めた。
話し込む後方の声を止めて、じっと段幕へと鋭い目を向ける。
神田につられて息を殺すクロウリー達の耳に、微かに聞こえてきいたのは"ざわめき"のようなもの。



「人の声…で、あるか…?」

「………」



小声で問い掛けるクロウリーに、神田は応えることなく重みのある段幕の裾を六幻の鞘で僅かに押し上げた。
クロウリーがその隙間から先を覗き込めば、幾人もの人の靴が見える。
光沢ある革靴やヒールは、高級な身分を思わせるもの。
しかし聞こえてくるざわめきは、大広間で聞いた貴族の世辞の投げ合いなどではなかった。

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