My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
舞踏会に突如現れたリッチモンドの姿をしたAKUMA。
場が急変したことでティムキャンピーも危機感を覚えたのだろう。
神田達を共にすることを許可したゴーレムが案内した先は、人目を欺くかのように存在する隠し通路だった。
其処で待ち受けていたのは、人のように動き話す肖像画。
しかしそれはイノセンスの影響ではなく、フレッドとジョージが住まう魔法界の力だと言う。
神田は一向に信じようとしなかったが、クロウリーは違った。
魔法界のことは有名な著書で多少の知識があるらしく、子供のように目を輝かせた。
しかしその表情も婦人の言葉で一変する。
「まさか…神田、」
「チッ」
確信を得た表情で呼ぶクロウリーに、舌打ちで返す神田は腕組みを解くと足早に双子の前に進み出た。
手にしていた六幻を腰に添えたまま、柄を掴み構える。
「ここを開けろ。できないなら押し通る」
「わわ!待つである神田…!」
殺気を放つ神田からは本気具合が伺える。
慌てて止めに入るクロウリーの声も、彼には届いていないようだった。
「流石にそれは黙って見ておけないな」
「それに実力行使は無理だ。そういうものが通用しないから"魔法"なんだよ」
婦人を守るように左右から盾となる双子に、神田の殺気が更に沸き立つ。
「ふざけたこと言ってんなよ。テメェらができねぇから俺がやるっつってんだ」
「ふざけてなんかいない。本当に無理なものは無理なんだって」
「僕達だってどうにか魔法を解きたいのさッユキがここを通ったことは確かみたいだし、それならもう少し待ってくれても…」
「臭ぇんだよ」
「え?…兄弟、風呂入ったか?」
「勿論だとも。そっちこそ香水の付け過ぎじゃないか?」
「違ぇよ。その絵の向こうだ」
六幻を構えたまま、神田の鋭い五感が働く。
「嫌な気配がする」
首裏を寒くさせるような、そんなひやりとした微かな気配。
そしてその気配を、神田は知っていた。
数え切れない程任務で向き合ってきた、夥しい殺人兵器の群を前にした時のそれと同じ。
もしそれが当たっていれば、ここを通り抜けた雪が無事である確率は途端に低くなる。
悠長に待つ気など神田にはなかった。