My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
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「"アロホモーラ"!」
「"エマンシパレ"!」
「私がそんな呪文で破られると思って?」
「…あちゃ」
「駄目だな、やっぱり」
「そんな容易い扉なら、ホグワーツの寮扉を任されたりしないわ。心外ね!」
「婦人、そんなこと言ってる場合じゃないから」
「縛られてる魔法が強過ぎるんだ。せめてここを開けることができたら…婦人、本当に開けられない?」
「できるなら私もそうしてるわよッ」
薄暗く狭い通路の奥底。
ぎゅうぎゅうに人口密度の上がった其処で太った婦人の肖像画を前にしているのは、双子のフレッドとジョージ。
二人の手にしている杖が何度振られても、婦人の肖像画は動くことも扉を開くこともなかった。
「まさかこんな夢のような存在があるとは…未だに夢を見ているような気分である…」
「できれば夢にしていてもらいたかったけどね」
「だからユキは君達を呼ぼうとしなかったんだな…僕らの同盟を守ろうとしてくれたってことだ」
後ろから見守っていたクロウリーが感心気味に声を上げれば、疲れた様子で双子は同時に振り返った。
ジョージの口から出た雪の名に、クロウリーの横で腕組みをしていた人物の眉間に皺が寄る。
「何が同盟だ、あいつを面倒事に巻き込みやがって。さっさとそこ開けねぇとその絵たたっ斬るぞ」
「んまァ!その物騒な男は何よ…!」
「まぁまぁ落ち着いて…って婦人、彼が男だってわかるの?」
「当たり前でしょう、魔法で変装してる訳でもないのに。どう見ても男が着飾ってるだけじゃない。先を通った彼女と言い、性別を偽るパーティでもしているのかしら?」
舞踏会にわざわざ男装して参加する貴族などいない。
それもこんな人目につかない通路の奥底を通る者など、クロウリーと神田には一人しか心当たりがなかった。