My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「うわビビった…何」
「何!?それは僕の台詞だよ!何してるんだい!?競売を観察しに来ただけであって、僕らはそれを壊しに来たんじゃないんだよ!」
「ああ、それは俺も悪いと思ってるよ。でもこのお嬢さんは、あそこの商品とは違う人間みたいだし」
「なんでそんなことがわかるのさ。競売は初参加だろう」
「彼女、舞踏会に参加してたから」
「? それが?」
ベッドに横たわる半裸を隠すように、ティキは脱いだジャケットを雪に被せると腰を上げた。
咎めるシェリルへと歩み寄ると、落ち着かせるように肩に手を掛けてドアへと促す。
「競売の商品は皆、恐らく遠方から連れて来られた人間だろ。舞踏会の参加者なんて、そんな足がつきそうな人間を競りに出す訳ないだろうし」
「それはそうかもしれないけど…確信はあるのかい?あの娘が舞踏会に出てた人間だなんて」
「舞踏会で見掛けた女性を見間違うなんて、俺がすると思う?」
「…じゃあ何故その貴族の娘が競りになんて出されてたんだい。それ事態が可笑しな話じゃないか」
「それは俺も聞きたいところ。多分、変に首を突っ込んで知ってしまったんだろ。リッチモンドはあの娘を処分したがってたし」
「そーそー。その処分っての、どうすんだぁ?」
「ヒヒッ♪デロ達が殺ってもいいケド?」
開いたドアの先。
其処で聞き耳を立てていたジャスデビの提案に、ティキは僅かばかり眉を潜めた。
「頼みはするけどお前らじゃねぇよ。ワイズリーの所に連れてく」
「はぁ?あいつに処分させんの?わざわざ?」
「デロ達でもできるのにぃ〜」
「悪ィけど、俺はあのお嬢さんの命を取ろうなんて思ってねぇから。ワイズリーに競売の記憶だけ抹消してもらえれば、殺さなくても済むだろ」
「なんだソレ。つまんね」
「つまんネ!」
「…ティッキー、あの娘を気に入ったの?」
呆れ顔のジャスデビとは違い、シェリルは意味深な視線をティキへと向けた。
声を抑えて伝えるティキに合わせるように、話の核心である彼女の耳には入らないように小声で問い掛ける。