My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「………」
「黙ってたんじゃわからないんだけど。交渉決裂ってこと?」
「っぃ、いえ…!ですが、この娘は他商品とは異なるもの、で…この世に残しておいては、私の立場が危うくなる者ですので…」
「つまり処分必須ってことか。…いいよ、俺がその処分を引き受ける」
だから、と付け足して。
「それ、俺に頂戴」
今度は疑問符ではない。
催促するように差し出される手には、見えない重圧があった。
「か…畏まりました。マクドウォール公爵、申し訳ありませんが…」
「何故ソノ男ノ言ウコトヲ聞ク?コレハ私ノモノデハナイノカ」
「悪いね」
憤慨するマクドウォールの触手に、ティキの指先が微かに触れる。
バシュッと軽い音を立てて弾けた触手の先は、まるで空気中に呑み込まれるように渦を巻いて消えた。
目を剥くAKUMAに、ひとつ笑い掛けて。
「俺のものにするよ」
それは否定など聞かない決定事項だった。
ぴりぴりと伝わる気配は、AKUMAの宿すダークマターの奥底が悟らせてくれた。
目の前の人物が何者なのか、問わずとも理解する。
AKUMAの上に立つ絶対的な存在。
そこに異を唱える権利などない。
見開いた一つ目の視線をティキの足元に下げると、失くした腕への異議も申し立てずにマクドウォールは触手に絡めた獲物を静かに下げた。
広げたティキの腕の中に横たえられる濡れた体。
ヒクつく発情状態の彼女の半裸を見下ろしても、ティキは表情一つ変えなかった。
「ショーを壊して悪かった。後はお好きにどうぞ」
「の、ノア様…!その女をどちらへ…っ?」
希望のものを手中にした途端に興味を無くしたように、その場から去ろうとするティキにリッチモンドが食い付く。
彼が気にしているのは、ティキでもショーのことでもない、女の末路である。
ああ、と仕方無しにティキは足を止めると、屋敷の主に問い掛けた。
「此処、人目を気にせず落ち着ける所はある?」