My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「なんだぁ?アレ」
「ウィリアム・リッチモンド伯爵。彼がこの土地の権力あるブローカーだよ」
「ヒ。じゃああの椅子に座ってる女の子は?」
「さてね。今回の目玉商品とでも言ったところじゃないかな?」
「紳士淑女の皆様。今宵はナイトメア・バンケットへようこそお集まり下さいました。束の間の時間ではありますが、それこそが永遠。此処でしか味わえない娯楽を、とくと骨身に感じて下さいませ」
司会のAKUMAよりカリスマ性のありそうな男の進行を見るところ、彼が目当てのブローカーであることは間違いないようだ。
車椅子に座る女は、今まで競売に出品されていた人間達とは身形がまるで違う。
ほぼ裸に近い下着で飾られ、口には卑猥な猿轡。
椅子に座るというより座らされているような、くたりと力の抜けた様からして、商品である人間達と同じ薬を投与されているのだろう。
恐らくシェリルの言う目玉商品というのは、的を得ているはず。
「さて。競りは一時中断して、ここからは余興を楽しんで頂ければと思います。今宵の華は、東洋の若き娘。彼女の処女が赤く淫らに染まる瞬間を見逃してはいけません」
「っ…ぅ…」
「そうそう。彼女は実に生きの良い娘でありましてね。薬漬けにされていてもこの通り。幸か不幸か、気丈な意思を保っている。この意思ごと肉体を支配される様は、さぞ見物でしょう」
「何言ってんだあのオッサン…」
「何ってナニだろ。今から強姦ショーやるんで見物してって下さいってことだろ」
「ゴーカン?ってナニ?」
「相手の意思問わず体を犯すってことさ」
現状をすぐに把握したのはティキとシェリル。
ぽかんと首を傾げるジャスデビに説明すれば、忽ちに双子はつまらなさそうな顔をした。
「ンだよ、どうせなら命のやり取りするショーでも見せろよ。一方的じゃ面白さ半減だろ」
「ロシアンルーレットとか楽しいのにネ?」
「それはお前らの嗜好だろ。此処のAKUMA達は双子より随分人間味があるらしいな」
「おや。ようやくティッキーも興味出たかな?」
「わざわざ競売を経由して餌を弄び殺すなんて、普通のAKUMAなら先に殺人欲求が勝って遊ぶ余裕もない。此処のAKUMAの質が違うってのはよくわかったよ」
ただし偏った嗜好だけど、と付け加えながらティキは再びワイングラスに口を付けた。
