My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「…成程ね…人身売買なんて文句で飾って、蓋を開ければ人間をAKUMAに提供する餌場って訳か」
「そういうこと。そこらの人間を捕まえてはAKUMAに差し出すブローカーとは一味違うようだからね。権力を持ってしてのものだけど…だからこそ人間やエクソシスト側にボロが出る可能性も少ない。此処で創られるAKUMAの質は、他の土地より大分良いと聞くよ」
「ふーん…提供してる餌が悪くなけりゃな。あの人間達、ちゃんと"育てられてる"だろ」
「流石ティッキー。よくわかったね」
「あん?育てるってなんだよ」
「デロもわかんなーい」
早速と始まる競売に、着々と競り落とされていく人間達。
競り落とした貴族の下に、恐る恐る自身の繋がれた鎖の鍵を手渡しに行く彼らを横目で見ながら、ティキは溜息を零した。
普通の競売では、落札された品物自体にそんなことをやらせはしない。
それも余興の一つなのだろう、欲の満ち満ちた目で舐めるように落札物を見る貴族の目は、どう見ても普通ではない。
その目に怯える品物達は、投与された薬の所為で恐怖は感じるものの逃げ出す素振りは見せない。
拙い動きで、言われるがままに従っている。
その先に待ち受けるのは苦痛と屈辱と、そして死だけだと言うのに。
「オイ、あれのどこが育てられてるってんだよ。ヘロヘロの操り人形みたいじゃねェか」
「ねぇかッ」
「(煩ぇな…)そういう意味じゃねぇよ。内面的なもんじゃなくて外見的なもんのことを言ってんの。日頃粗末なもんしか食ってない人間が、あんな血色や艶の良い顔してる訳ねぇだろ」
ずずいと机に両手を付いて身を乗り出してくるジャスデビを前に、ティキは面倒臭そうに理由を説明した。
伊達に流れ者を経験してはいないからこそ、わかることだ。
「白の俺の方がまだあの鎖似合う気がする」
「ティッキー…もう少しマシな生活しなよ君。折角の美しい顔と艶めかしいボディが勿体無い」
「気持ち悪いこと言わないでくれるかな兄サン?酒が不味くなるから」
心底残念そうな顔で、それこそ舐めるように見てくるシェリルの視線に、ティキはにっこりと冷たい笑顔で返した。
本気で言っているから、尚の事この兄は性質が悪いのだ。