My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
───数十分前
「…宴ってまさかこれ?」
「うん?ワイン美味しくないのかい?」
「違ぇよ。まさかこれがシェリル兄サンの言ってた宴かって聞いてんの」
「はは、まさか。これが今回の仕事だよ。此処リヴァプールに、なんとも面白いAKUMAを創るブローカーがいると千年公から聞いてね。その偵察がてら、舞踏会に赴いたって訳さ」
薄暗い観客席。
一番後ろの離れた丸テーブルでワインを嗜む影が四つ。
「ヒ?舞踏会に参加するのが仕事じゃなかったの?」
「何言ってるんだい。それだけのはずがないだろう。君達は別に社交界に顔を利かせてもなんの得もないのに」
「あ"?んだとコラ。つーかココ飯は出ねぇのかよッ」
「ああもう煩いなぁ。此処は表の舞踏会とは違うんだよ。少し大人しくしててくれないかい?」
ぐびぐびとワインをジュースのように飲み干していくのは、今回の仕事のダシにされた"絆(ボンドム)"のノア、ジャスデロとデビット。
やれやれと肩を落として注意を促すのは、今回の仕事の主要人物とも言える"欲(デザイアス)"のノア、シェリル・キャメロット。
そして退屈そうな顔でちびちびとワインを口にしているのは、今回の仕事に強制参加させられた"快楽(ジョイド)"のノア、ティキ・ミック。
シェリルに言われるまま訪れたのは、豪華な屋敷の裏の顔とも言える人身売買の競売場だった。
唯一詳しいことを知り得ているシェリルの顔パスで入れはしたが、AKUMAだらけの競売などティキの興味を微塵も惹きはしなかった。
「でも普通の人間に興味があるティッキーなら、この競りにも興味出るんじゃないかと思ってね」
「その普通の人間は何処にいるんだよ」
「もうすぐ出てくるよ。ほら、」
シェリルの声が合図のように、離れた舞台に突如パッと光が灯される。
司会らしき男が舞台の上に進み出ると、AKUMA達の視線が一斉に向いた。
「レディース&ジェントルマン!今宵もナイトメア・バンケットへようこそ!司会は私、ポートマンに務めさせて頂きます!」
さくさくと司会を進める男も、よく見ればAKUMAである。
机に頬杖を付きながら右から左へと男の進行をスルーしていたが、やがて鎖を引かれ舞台に並ばされる人影が出てくるとティキの視線も変わった。