• テキストサイズ

My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



「魔法使いは、何も魔法界でだけ暮らしてる訳じゃない」

「彼らみたいにマグルのフリをして生きてる者も沢山いる」

「じゃあ、じゃあ、私が知らないだけで…?」

「そう」

「ユキのお隣さんだって、実は魔法界の住人かもしれない」

「ええ…!」



驚きの声。
しかしそれは感嘆だった。

見ず知らずの擦れ違うだけの他人や、当たり前に接していた知人が、もし魔法を扱える人種なのだとしたら。
憧れの世界は、もしかすると極々身近にあるのかもしれない。



「夢が膨らむなぁっ」



ついて歩きながら声を弾ませる雪に、両側を歩く双子は面白そうに目を向けた。



「ユキって案外、可愛いところあるよな」

「それってさ、僕らの世界を信じてくれてるってことだろ?」

「…案外って何、案外って……まぁ…あんなことを実際に体験させられたら、ね」



思いも掛けない褒め言葉に、居場所を探すように彷徨った手が首筋を擦る。
そうして振り返った雪が目で示したのは、長いこと使われた様子のない暖炉。
暖炉から暖炉へ、別の場所へと一瞬で移動する。
方舟の能力に似たそれは、しかし方舟とは全く異なる存在。
教団でも一切耳にしたことのない事例だ。



「それでも人間は疑う生き物だから、やれイカサマだ催眠術だ、簡単に納得しない人は多いよ」

「その点、ユキは魔法界に寛大なところがある。僕らとしてもありがたい」

「そうかなぁ、ただハリポタ好きなだけ…ん?」



ついて歩いていた足が止まる。
薄暗い何もない部屋はすぐに壁へと辿り着き、古びた扉を薄らと雪の目の前に浮かばせたからだ。



「出口?」

「ああ。でも出る時は周りに注意しないと」

「? なんで?」

「言っただろ、此処は"目隠しの部屋"。マグルには見えない部屋なのさ」



僅かに開いた扉の隙間から外を伺っていたフレッドが頷く。
よしと応えたジョージに手首を握られると、するりと扉の隙間から向こう側へと抜け出した。
急に視界に飛び込んできたのは明るい光。
片手を目上に翳しながら、雪は眩しそうに辺りを見渡した。



「此処…」



見えたのは、何もなかった部屋とは打って変わり、展示物が並ぶ室内。
ビートルズ歴史博物館内部だ。

/ 2655ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp