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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



視界がエメラルド色に染まったかと思えば、体は重力を失い独楽のように踊った。
上も下もわからない状態でぐるぐると雪の視界が回る。
そうして知らない部屋が曖昧に目の前に現れては高速で流れていく。
まるでフラッシュバックのような光景に、目が回ってしまわないようにと咄嗟に雪は固く目を瞑った。
しかし息を止めるように呑んだ一瞬で、全ては通り過ぎたようだ。



「っ!」



急に足場ができる。
固い地面に足を付くと、よろけるように雪の体が前のめった。



「おっと。大丈夫かい?」



倒れかけた雪の体を支えたのは、先程まで聞き馴染んでいた声の主。
顔を上げれば、雪の体を支えて覗き込むジョージの姿があった。



「ちゃんとついて来られたようでよかった」

「あ、ありがと…」

「なぁに、これくらい。それより其処から出て、すぐにフレッドが来る」



腕を引っ張られて狭い視野から抜け出す。
そうして初めて、雪は自分が新たな暖炉の中にいたことに気付いた。
暖炉から出れば、先程の在庫部屋とは全く異なる室内が目の前に存在している。

ぼう、と音がした。
振り返れば、エメラルドグリーンの炎を纏ったフレッドが暖炉の中から突如現れる。
自分もあのようにして暖炉の"道"を通ってきたのかと、思わず目を見張った。



「初めてにしては上出来だ、ユキ」

「無事リヴァプールに着いた」

「此処が?」

「そうともさ。此処はビートルズ歴史博物館の中」

「通称"目隠しの部屋"だ」

「ビートルズって…あの、ビートルズ?」

「知ってるのかい?」

「有名でしょ、知ってるよ」



〝ザ・ビートルズ〟
リヴァプール出身の四人組からなる、世界的にも人気を博した伝説のロックバンド。



「人間界ではそうらしいね。歴史でしか知らないけど」

「人間界ではって…魔法界での顔もあったの?」



恐る恐る問い掛ける雪の顔が"まさか"と緊張する。
雪が何を言いたいのか理解したのだろう、双子は何喰わぬ顔で頷いた。



「勿論さ」

「彼らも魔法使いだからね」

「ええっ!それ本当!?」



かの有名な四人組が魔法の国の住人だったとは。
開いた口が塞がらなくなりそうだ。

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