My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
誓いのように握り合う手と手。
「さしずめ"他人同盟"ってとこだな」
「何その名前。ヘンテコリンじゃない?」
「いいや、"他人同盟"!悪くないじゃないか」
両手を握られながら意を問う雪とは反対に、双子は同盟が気に入ったようだ。
「じゃあ早速だけど他人同盟さん、私を元の場所に戻してくれる?いきなり通信OFFにしたから、仲間が心配してると思うし」
出番だと思ったのだろう、雪のフードの中に隠れていたティムキャンピーが顔を出してきた。
「ガゥ」
「うん、繋げていいよ。こっちの状況を伝えなきゃね」
ピーガガ、と複合機が唸るような音を発しながらティムキャンピーが電波を飛ばす。
その姿にふと雪が首を傾げた時、プツリと見えない向こう側と繋がる音がした。
「ユウ?アレン?雪だけど。さっきはごめんね」
『………雪?』
やがてぼそりと返されたのは、繋げた通信ゴーレムの主である神田の声。
ああよかった、と雪が安堵の表情を浮かべたのも束の間。
『なんで切りやがったテメェ何処だ吐けコラ』
「(…うわあ…)…何処だったっけ」
『あ?』
ティムの口から漏れたのは、ドスの利いた声での問い掛け。
最早脅しのような声に思わず雪もしらを切る。
通信ゴーレムに睨みを利かせている神田の姿が目に浮かぶようだ。
「えらく柄の悪い仲間だな。チンピラか?」
「ユキの腕っ節の強さもそこにあったのか…成程」
背後でこそこそと囁き合う双子の声も逐一耳に入ってくる始末。
「と、とにかくそっちに戻るから。会ってから説明する」
『そっちって何処から戻るんだよ。其処は何処だって聞いてんだ』
「それは上手く説明できないから…元の場所に戻して貰えるんだよね?」
「ああ、いいともさ」
「じゃあピアヘッドの近くの広場に戻るから。もうAKUMAは昇華したの?」
『問題ない。つーか誰と話してんだ、お前一人じゃないのか』
「それも話せば長くて…」
『誰だそいつら』
「…なんで相手が複数ってわかるの」
『聞こえる足音が二つじゃない。お前と声の男と別に、まだ一人いるだろ』
「(…うわぁ…)…流石」
探偵の末裔は、実は神田ではなかろうか。