My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「何をしたの。失態って」
真剣な面持ちで声を萎める雪に、やがて沈黙の中目線を交えていた双子は同時に溜息をついた。
「ホグワーツにあったものを、人間界に持ち出されてしまったんだ。僕らはそれを探してる」
意気揚々とした声は消え、静かに語り出したのはジョージ。
「ある男に情報を漏らしてしまったのが、僕らの失態さ。どうやって入り込んだのか、自然と魔法界に溶け込んでいたからマグルと気付かなかった」
「気前の良い客だったから、つい口も緩んでホグワーツのことを色々話してしまったんだよ。情けない話だろ」
「その男にホグワーツのものを盗まれたの?」
「ああ」
「これでも情報を掻き集めて、あの街に流れたことまでは突き止めたんだ」
「あの屋敷は第一候補ってワケさ」
「じゃあ犯人にも目星はついてるんだね」
「「それはなんとも」」
「…大丈夫なのそれで」
思わず呆れる雪に、しかし双子の表情は曇らなかった。
「顔は見てるから、見つかれば一発なんだけど」
「黒髪黒髭のモサッとした、ハグリッドみたいな男だったな。確か」
「屋敷内にはいなかったの?」
「そう思って見て回ってたんだけどさっぱり。その途中でユキとバッタリ、てな具合さ」
「でもまだ可能性はある。それならやるまでだ、止めないでくれたまえ」
「別に止めないけど」
「「え?」」
予想外だったのだろう、ぱちくりと目を瞬く二人に、雪は当然のように首を横に振る。
「私もあの屋敷で探し物をしてるから、邪魔されたくなかっただけ。私の探し物は魔法グッズなんかじゃないから、目的は別のようだけど」
「なんだい、ユキの探し物って」
「気になるなぁ。まさかそれがいのせんすってやつかい?」
「…人間界にあるものだよ」
ぽつりと告げる雪の応えに、それ以上踏み込ませない意図が含まれていることに双子も気付いたらしい。
深くは聞かずに納得したようだった。
「わかったよ。僕らには僕らの世界がある。君らには君らの世界があるように」
「これは僕達の問題で、それは君達の問題ってワケだ」
「そういうこと。これ以上は突っ込まないから、二人も邪魔しないで」
「フム。そういうことなら」
「了解しよう」