My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「なんだい、見張りって」
「やっぱり僕らに店を畳めって?」
「それは違う!オレはそんなことで煩く言いやしねぇ!」
「「じゃあなんなのさ」」
途端に営業スマイルを消して疑いの目を向ける双子に、ハグリッドの目が挙動不審に泳ぐ。
どうやら嘘の付けない性格なのだろう、来店は魔法グッズ目当てでも、ハーマイオニーの同行でもなかったようだ。
「妙だとは思ったんだ。ロンならまだしも、二人共僕らの店に興味がありそうには思えない」
「さぁ、君らの目的は?」
畳み掛けるように問う双子に言い逃れはできないと悟ったのか、先に諦めたのはハーマイオニーだった。
「…ロンが心配してたのよ」
溜息をつきつつ、彼女が見せたのは不安げな表情。
ちらりと一度雪に目を向けた後、己の体を抱きしめながら声を潜めた。
「この間の…"あの"事件、貴方達が関わってたみたいだから。変なことしないかって」
敢えて具体的な言葉は避けているのだろう。
見知らぬ雪の存在を気にしているのか、どうやらハーマイオニーは用心深い性格のようだ。
「おやおや、そんな兄思いの弟を持っていたなんて」
「なんて光栄の至りかね」
「私は真面目に心配してるのよ。ハグリッドもそう。無茶は貴方達の専売特許でしょ」
「フム。それは否定しない」
「でも心配は要らないさ、僕らも自分の立場くらい自覚してる。大人しく此処で新しい魔法グッズの案でも考えてるよ」
疑わしいのか、ハーマイオニーの表情は堅いまま。
雪も双子と出会い日は浅いが、二人には"大人しく"という言葉がとてもじゃないが似合わないのはわかっていた。
だからこそハグリッドとハーマイオニーは素知らぬフリをしてまで、双子の様子を見に来たのだろう。
(なんだ…仲、悪い訳じゃないんだ)
見張りなどと言ってはいるが、それは相手を思いやる気持ちがなければできない行為だ。
事件の内容はわからないが、どうやら二人共双子を心配していたらしい。
ハーマイオニーの態度からして双子を嫌っているのかとも思っていたが、雪の予想は外れていた。