My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「人語を話す生き物はそういねぇ!ユキと言ったな、お前さんそいつを何処で見つけたんだッ?」
「え…いや、」
『誰だその声───』
もぎゅ、と雪の手がティムキャンピーの口を塞ぐようにして丸いボディを握り込む。
ゴーレムの中で、クロス・マリアンが造り上げたティムキャンピーは特性仕様。
下手に教団以外の者に渡す訳にはいかない。
「少しでいいから、さ、触らせてくれ…!」
「これは生き物じゃないからッ」
ぬっと伸びる巨大なハグリッドの手に、咄嗟にティムキャンピーを抱き込んだまま雪は双子の背後に駆け込んだ。
「通信機器!ただの機械なの!」
「じゃあなんで動いちょるんだ!?」
「そ…っそういう仕様で…!」
『雪さ…』
「ッ(今は黙って!)」
無理矢理に通信を切り輝く金色ボディを背中に回して、ハグリッドの目から隠す。
明らかに不審な態度だが、双子も雪がマグルと気付かれてしまう可能性があると思ったのだろう。
互いに目配せをすると、雪の壁になるように前に進み出た。
「ハグリッド、知らないのかい?」
「あれは僕らがユキの為に作った試作品さ。伸び耳と同じ効果で、離れた人の声を拾うことができる」
「伸び耳?」
「僕らの作った玩具だよ」
「結構売れ筋いいんだぜ、これが」
ずずいと左右から寄る双子に、巨人であるハグリッドの方が圧されている。
その目はもうティムキャンピーを捕えてはおらず、雪はほっと安堵の息を溢した。
「ハグリッドも試してみるかい?」
「オ、オレはそんなもんに興味はねぇ…!」
「じゃあなんで此処に来たのさ。まさかハーマイオニーのお守りとか言わないよなぁ」
「ちょっとフレッド!ジョージ!ハグリッドに変なこと…っ」
「お守りじゃねぇ!オレはお前さんらを見張りに来たんだッ!」
「「見張り?」」
双子から後退りながらも声を張り上げたハグリッドから、予想もつかなかった言葉が飛び出す。
思わず止まる双子と、はっと口を噤むハグリッドと、己の顔に手を当てるハーマイオニー。
彼らの姿を見渡しながら、雪は眉を潜めた。
どうやらハグリッドがハーマイオニーと店に訪れたのは、然るべき理由があったらしい。