My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「なんだ、そんなことをわざわざ言いに此処へ?」
「違うわ」
呆れるフレッドの声を否定したのは、地響くハグリッドの声ではなかった。
その後ろから響くは、可憐な少女の声。
「私が此処に来たくて、丁度ハグリッドと居合わせたからついて来て貰ったの」
小山の影から姿を現したのは、長いローブに身を包んだ一人の少女だった。
茶の髪は縮れており量も多く、彼女の背中まで覆っている。
同じに茶の瞳は意志の強い光を纏っているようにも見えた。
背丈はそう低くはないようだが、巨人のようなハグリッドと並ぶとなんとも小柄な少女に見える。
年頃は、双子より幾分下だろうか。
「ハーマイオニーじゃないか」
「やぁ、ハーミー。今日はロニー坊やは一緒じゃないのかい?」
あまり聞いたことない名の発音に、雪はぱちりと目を瞬く。
おどけた調子で問い掛けるフレッドに、ハーマイオニーと呼ばれた少女は縮れ毛の下の眉を潜めた。
「お生憎様、今日は私一人よ。ロンと一緒じゃないと出入り禁止なのかしら」
「そんなことはないさ。なぁ兄弟」
「勿論、客なら誰だって大歓迎!」
「じゃあ見て回ってもいいわよね」
素っ気なく返事を投げた後、ハーマイオニーの視線が他に移るのは早かった。
しかし目の前に並んでいるのは悪戯グッズ、所謂玩具に似た類であるのに、彼女の顔は少しも楽しげには見えない。
そんな顔で品物を物色するものだろうか、と雪は内心首を傾げた。
そこへ不意に上がった少女の目が、雪と重なる。
「その人もお客なんでしょう?なんでそんな所に隠してるの」
「別に?隠してなんかないさ。ユキ、」
怪しい行為を続ける方が目を付けられると思ったのだろう、当たり障りない笑顔で体をずらして前へと促すジョージに、頷こうとすれば手首を握られた。
痛くはないが、弱くもない。
意図を視線で問えば、笑顔だけで返される。
大方、余計なことは言うなと念押しでもしているのだろう。
現実の魔法界の規則などは知らないが、マグルが歓迎される場ではないことは雪も薄々感じていた。
わざわざ自分は魔女ではないと吐露し、墓穴を掘る気もない。