My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「まぁ、僕らにも僕らの都合があるのさ。譲れないものと言うか」
「これはまだ誰にも言ってないんだ。ある計画があってね。だからユキも周りには秘密にしてくれよ」
「秘密というか、魔法使いなんてフレッドとジョージしか知らないけど…」
「それは良いことだ」
「そのままの君でいてくれたまえ」
にこにこと笑いながら両側から肩を叩いてくる。
そんなフランクさを見せる双子に、雪は何故二人が頑なに店の外に出そうとしなかったのか理解した。
魔女ではない人間というマグルの立場もあったかもしれないが、雪の存在自体を人目に付けたがろうとしていない。
「…何企んでるの?」
そこに疚しさがないとは言い切れない。
ジト目で見る雪の反応に、双子は再び目を瞬いた。
「振り返れば、リヴァプールでの行動もいちいち怪しかったし。あれは二人からすれば人間界なんでしょ?…其処で何してたわけ?」
「フレッド。ユキは刑事か探偵の末裔なのか?」
「その線は有効だな。見ろよジョージ、ユキの目付き。三日は徹夜しないと仕上がらない鋭さだぞ」
「茶化しても無駄だからね。あの屋敷で何してたか答えて」
さぁ、と畳み掛ける雪の圧に、二人は顔を見合わせるとやれやれと肩を下げた。
観念したように見えたが、腕組みをして向けてきた緑の目は不適なもの。
「なら僕らも教えてもらわないとな」
「僕らから見たユキだって、只の観光客にはとてもじゃないが見えない」
「そんなヘンテコリンな生き物、見たことないし」
「あんなヘンテコリンな広場での生き物も、魔法動物にはいない」
「ガゥ!」
ヘンテコリンという言葉に意義を申し立てているのだろう。
肩の上で煩く鳴くティムキャンピーを見やり、それもそうだと雪は内心納得してしまった。
エクソシストやノアの存在を知らない者からすれば、ゴーレムもAKUMAもただのオカルトや余興物に見えても可笑しくはない。
それこそ夢物語だ。