My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「だってあの魔法界の物語を綴った本は半ば史実状のもので、その世界も現実に存在するなんて。そんな夢物語ある?」
「夢のようかもしれないけれど、僕らには当たり前に在った世界だから、そうとしか言いようがないんだけどな」
「勿論全てが現実な訳じゃない。あの本の作者もこの世界の住人だから、マグルの世界にも出版するってことは充分弁えて脚色してある。君らの世界で言うノストラダムスやアーサー王みたいなものさ。彼らの歴史書だって幾つも出てるし脚色した話もあるけど、ちゃんとこの世に存在していただろ?」
「そんな偉人と比べられても…」
〝ハリー・ポッターシリーズ〟
J・Kローリング著書の児童文学、ファンタジー小説である。
主にイギリスを舞台とした、魔法使いであるハリー・ポッターという少年を主軸に置いた魔法界を巡る戦いと愛の物語。
世界的にもヒットしたその物語は、雪も一度目を通したことがあるが、勿論それはただの一読者として。
しかし雪が空想ファンタジーと信じて楽しんでいた物語は現実でありながら、それが全てではないとも彼らは言う。
にわかには信じ難いが、嘘だと証明付けられるものは今此処には何もない。
「じゃあ何。二人で此処に魔法グッズのお店を建てて、経営してるってこと?子供なのに」
「子供が店を経営しちゃいけない法律なんて、魔法界にはないさ」
「まだホグワーツ生だけど、いずれ自立してこっちを本業に稼いでいくつもりでいるしね」
「ホグワーツ生?ホグワーツって、あのホグワーツ学校?」
「流石ポッタリアンユキ。説明が省けるから助かる」
「心なしか顔も輝いてるようだぜ、ジョージ」
「だってあのホグワーツでしょ!いいなぁ、一度行ってみた…待って自立するって。ホグワーツを辞めるってこと?」
「…流石ユキ。一字一句取り零さないとは」
「え。本当に辞めるの?あんなに素敵な学校なのに!」
ホグワーツ魔術魔法学校を辞めることを、赤のマグルにここまで非難されるとは。
思いも寄らぬ雪の反応に、面白そうに双子は目を瞬いた。