My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「……ティム、」
やがて沈黙の後に雪が導き出したのは、一つの方法だった。
袖を捲り上げた腕を、ティムキャンピーの目前に曝す。
「噛んで」
命じれば一度止まりはしたものの、がぱりと鋭利な歯が並ぶ口を開くとティムキャンピーは遠慮なく腕に噛み付いた。
「ぃッ痛い痛い!」
「うん、だろうね」
「何してるんだい。頭でも打った?」
「これが夢かどうか確認したかっただけ!この世界が本当かどうかっ…ティムもういいよ痛い!」
「ガゥッ」
痛みから解放された腕を見れば、薄らと内出血が出来ている。
この痛みは嘘ではない。
となるとこの場も幻想ではなく本物ということになる。
目の前にいる双子の存在も同様。
「本当に魔法使いだなんて夢物語を主張するなら、ちゃんと私を納得させてよね」
構えていた杖を下ろす雪に、双子は再三顔を見合わせた。
どうやら雪は、聞く耳を持ってくれたらしい。
「「勿論」」
そうとなれば、迷う道などない。
「───納得いかない」
「ええー…」
「手強い…」
それからものの30分。
二人から代わる代わる告げられた説明の節々に、雪は顔を渋めることしかできなかった。