My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「でもこれじゃ後始末が大変…」
「ガァ?」
「ん?AKUMAのじゃなくて、一般人に向けた後始末ね」
雪のフードに再び潜り込んでいたティムキャンピーが、彼女のぼやきに反応する。
これだけの大人数の前でAKUMAとの戦闘を繰り広げてしまったのだ。
テロリストだの変な噂が立たないよう、政府には説明をしなければならない。
ヴァチカンの要請とあらばどの国も聞く耳を持つだろうが、一般市民となれば別だ。
オカルトものだと一切信用せず、聞かない者もいる。
「国の政府が対処してくれることもあるけど、統治されていない土地だったり、面倒事を嫌う政治も多いから。そういう時は教団で対処しなきゃならないの。きちんと説明する時もあるけど、大規模な時は民衆には当たり障りない情報を提供して場を治めたりもするんだよ。怪我人がいなくて揉め事が起こりそうな時は、見世物の一つだってガセを流したり」
「…ガゥ…」
「そうそ。そういう時と場合を見極めての細かい後始末が一番厄介と言うか…面倒臭いんだよね」
ファインダー達の中で嫌われる仕事の一つに、その後始末は必ずと言っていい程入っている。
自分達にとっては命を賭した仕事だが、無関係な者には厄介事でしかないことは多い。
そういう人の心を治めること程、難しいことはない。
故に、世界の為とあれば派手に暴れてくれるなとは言えないが、もう少し穏便にAKUMAの排除はできないものだろうかと考えてしまう時もある。
エクソシストに比べ、任務同行したファインダーの提出書類が遥かに多いのもその為だ。
今回任務同行しているファインダーは雪のみ。
一人で全ての始末処理をしなければと思うと、目の前の派手な騒動に多少気が重くなる。
仕事に慣れはしていても、面倒なものは面倒だ。
建物の屋上に辿り着いた雪は、溜息をつきながらその場に屈み込んだ。
見渡す群衆の中に紛れ込んだAKUMAは、そのうちアレン達によって一掃されるだろう。
「───ん?」
危険だと察してはいるのだろう、興味本位で騒動に近付こうとする一般人は少ない。
逃げ出す人々に埋め尽くされていた群衆の数が減り、一人一人の表情も見て取れる。
だからこそ気付いた。
「あ!」
群衆に紛れた、燃えるような赤毛の青年に。