My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「なんで急にAKUMAが…アレン達のこと、嗅ぎ付けに来たのかな…っ」
昼食を取っていた店から距離を取りながら、雪は視線同様思考を回した。
数日前からリヴァプールに滞在していたのだ、AKUMA討伐も行ったアレン達のことを何処からかAKUMAが嗅ぎ付けたのかもしれない。
(アレンだけじゃなく、私のことも気付かれてたなんて)
しかし雪の肝を冷やしたのは、先程AKUMAが放った言葉だった。
ジャスデビと接触した時には、雪がノアであることは気付かれていなかった。
しかし今では黒の教団内に14番目とは別のノアがいることが、なんらかの形で伝わってしまっている。
雪はアレンとは違い、AKUMAと戦えるイノセンスの力は持っていない。
ノアの力でAKUMAを捩じ伏せることはできるだろうが、それも諸刃の剣だ。
神田に言われた通り、事が終わるまで身を潜めておくのが得策だろう。
しかし何処にAKUMAが潜んでいるかわからない現状、目の前に広がる群衆に紛れるのは危険だった。
そこで雪が弾き出した答えは、四方ではなく上へと逃げること。
近くの建物の非常用梯子に飛び付くと、ギシギシと唸る錆だらけの鉄を伝い登っていく。
「僕が捕まえますから、後は頼みます!」
梯子を伝い登る中、見えたのは宙を飛躍する白い塊。
イノセンスのマントを靡かせるアレンが、そこから触手のように道化ノ帯を四方へと飛ばした。
まるで意志ある蛇の如く、帯が一斉に群衆の中のAKUMAを捕え引き摺り出す。
「こっちは任せて!」
「後ろは私が殺る!」
同じくイノセンスを発動させたリナリーとクロウリーが、引き摺り出されたAKUMA達へととどめを刺す。
「くぐ、ぐ…!おのれエクソシスト風情が…!」
「どうした、口だけかよ。拍子抜けにも程があるな」
「何を…ゲッ!」
「顔がガラ空きだ」
競り合う機械式AKUMAの腕と神田の六幻の刃。
神田より遥かに巨大な体をしていながら、押されているのはAKUMAの方だった。
その様をつまらなく見ていた神田が、柄を持ち直したかと思えば角度を変え一気にAKUMAの脳天を貫く。
どれ程の数のAKUMAがいるのか雪には把握し兼ねたが、見る限りではAKUMAの劣勢に思えた。