My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「なんだ、爆発っ?」
「事故か?」
「誰かが銃を撃ったんだ…!」
「チッ、外野が多過ぎる。モヤシ!その眼は飾りじゃねぇんだろ、標的だけ絞り出せ!」
「煩いなぁ、わかってますよ。あとモヤシじゃなくアレンです」
ざわめく民衆の大半は無害な一般人だ。
彼らを巻き込む訳にはいかない。
「知ってるぞ、その眼、その髪、その五芒星。ノア様に見つけたら報告しろと言われてる、裏切り者のノアだ…!」
「僕はノアじゃありません。裏切ってもいませんし、勝手に決め付けないで下さい」
びりびりと人の皮を破り捨てながら姿を現す新たな機械式のAKUMAに、アレンはジト目で溜息をついた。
14番目のノアなど、勝手に周りが決め付けてきたことだ。
アレンにとっては迷惑な話でしかない。
「報告ならどうぞ、身内のゴタゴタは身内だけでやって下さいと伝えてくれませんか?僕は赤の他人です」
「何を言っている、貴様だってその身内で───…」
言い掛けた機械式の目が、ぎょろりとアレンの周りを探る。
「待て。14番目が此処にいるなら、"もう一人の身内"も此処にいるかもしれん」
それが誰を示唆しているのか、問い掛けずとも皆知っていた。
沈黙を作るアレン達の中で、自然と雪の体に力が入る。
「そいつは見つけ次第捕獲せよと、ノア様に命を受けている」
「さぁ、誰のことですか?此処にはエクソシストしかいませんが」
「…行け。終わるまで何処かに身を潜めてろ」
白けた顔でAKUMAと対峙するアレンを視野に、六幻の鍔を親指で押し上げ刃を抜き出す。
雪にだけ聞こえる声で神田は呟くと、AKUMAに向かって踏み出した。
「ノア様がいの一番に欲している者だ…情報だけでもお釣りがくる。さぁ、その女のことを教えてもらおう…!」
「は。知りたきゃ力尽くで来いよ。それがテメェらのセオリーってもんだろ」
漆黒の刃へと添えた指先を滑らす。
忽ちに鋭い光沢の刃を現していく六幻を手に、神田は殺気立った笑みを浮かべた。
「俺を倒せたらの話だがな」