My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「見たって、赤毛のっ?」
「うんっ」
やっと手に入った念願の情報に、思わず雪も机から身を乗り出す。
相手が幼い子供でも願ったり叶ったりだ。
「一体何処で───」
「待って」
続け様の雪の質問を止めたのはアレンだった。
片手で雪を制し、背後の少年と向き合う。
「僕にも教えてくれますか?本当に赤毛の彼だったのか」
にっこりと浮かべるアレンの笑顔は、先程神田と向き合っていた時の笑顔と同じものだった。
綺麗で隙のない完璧な笑顔。
「うん、本当に赤毛だったよ」
柵の上に身を乗り出した少年もまた笑顔で頷く。
ぴり、と走る空気圧に神田の手が脇に立て掛けた六幻へと伸びた。
「おにーさんの血みたいに真っ赤な」
ブッと少年の目玉を突き破り、内側から覗いたのは砲筒。
ドドォッ!
それはAKUMAの散弾だった。
「アレンッ!」
至近距離で攻撃を受けたであろうアレンの姿は、散弾により吹き飛ばされた机や皿や食材の破片で捉えることができない。
席から飛び退いた雪の足を止めたのは、同じく身を退いていた神田だった。
六幻の柄を握ったまま、片手で雪の前を制す。
「あいつなら大丈夫だ、下がってろ」
散弾により巻き上がる煙が、ひゅおりと退く。
イノセンスを発動させ発光する左手で空を切ったのは、同じに白く発光するマントに身を包んだアレンだった。
座っていた席は粉々に砕け散っていたが、その場から一歩も動いていない彼は傷一つ負っていない。
「な、んで…わかっ…ゴボッ」
「僕の左眼はAKUMAを見分けることができるんです。それくらいの情報、AKUMAなら知っているかと思いましたけど」
鋭く巨大な爪はAKUMAの頭を鷲掴みにし、刃で引き裂くように握り裂いた。
「白髪にAKUMAのペンタクル…ってことは、あいつァ…」
「14番目のノアか…!」
「…どうやら集団で襲いに来たらしいな」
ざわめく気配は、何事かと集う人の群の中から。
どうやらAKUMAは一匹だけではなかったらしい。
神田の鋭い視線が捉えたのは、アレンに注目を置く人々。