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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



「あれ…っティム、あれ!」

「ガ!」

「間違いない!あの赤毛だ!」



騒ぎを聞き付け姿を現したのだろうか、しかし今は理由などどうでもいい。
咄嗟に身を起こすと、雪は屋上から身を乗り出した。
再び錆びた鉄柱を両手で掴むと、一気に梯子から滑り下りる。
地面へ下りてしまえば、人混みで赤毛を上手く見つけられない。



「ティム、追い掛けてっ!」

「ガァッ!」



告げればフードの中から飛び出す金色の閃光。
それを目印に、雪は人混みの中を走った。



「雪さんっ!?何してるんですかっ!」

「赤毛っ!見つけたの!」

「えっ?」

「何やってんだ!出てくんじゃねぇよ!」



真っ先に赤毛を追う雪に気付いたのはアレンだった。
同じく神田の罵声が飛ぶも、雪の目はティムキャンピーを捉えたまま。



「三度目の正直…!今捕まえないと次はないかもしれない!」

「なら私が加勢しよう」

「! クロウリ…っ」



ザッと横切るように、雪の目の前に下り立ったのは翻る真黒なコートのマントだった。
AKUMAの血を摂取したのか、普段の穏やかな表情から強面の鋭い目付きへと変わっているクロウリー。



「赤毛は何処だ?」

「ティムが…わッ!?」

「掴まっていろ」



軽々と雪を腕一本で抱え上げたかと思えば、常人では成し得ない脚力で建物の壁へと跳び移る。



「私が足になる。場所の指示を」

「わかった…!2時の方向!あのオレンジの建物に跳んで!」



雪の指示で壁から壁へと跳び移るクロウリーは、群衆の上を飛び越え赤毛の青年へと迫った。
空を滑空する真黒な人影。
クロウリーの形相も相俟ってか、人々には不気味なものに映ったのだろう。
各々が彼を指差し恐怖で慄く。
その騒ぎに気付いたのか、迫っていた赤毛の頭が上を向いた。



「!」



目が合う。
彼が浮かべたのは、恐怖ではなく焦りの表情。
どうやら今度は、雪のことを憶えていたらしい。

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