My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「利用?」
「舞踏会を?」
「どうやって」
「うん」
一斉に皆の目が向く中、雪はぴんと人差し指を立ててみせた。
「こっそり侵入したんじゃ、あの赤毛と同じになるし。恐らく警備は以前より厳重になってるはず。それなら真正面から堂々と行った方が危険は少ない。灯台下暗しだよ」
「それで舞踏会って…」
「うん」
リナリーの顔が期待に満ちる。
エクソシストの顔から華やかな世界に憧れる少女の顔に変わるリナリーに、雪はまた一つ笑った。
「だから私達も舞踏会に参加するの。貴族としてなら、あの屋敷に堂々と入り込めるでしょ」
「本当っ!?」
「うん」
両手を握り目を輝かせるリナリーに、つい雪も笑みが深くなる。
そんなに喜んで貰えるなら、提案した甲斐があるというもの。
「舞踏会ですか、僕参加したことないです」
「私は子供の頃、お祖父様と一度だけ行ったことがある。眩い世界だったである」
「まぁ…それも一つの策かもしれませんね」
「ふん、舞踏会なんて…馬鹿馬鹿しいですわ…」
「おや。出たそうな顔してますね、テワク」
「そ、そんなこと…!」
リナリーだけでなく、アレンとクロウリーの顔も明るい。
テワクは否定しているが、赤らむ頬を見れば一目瞭然。
あのリンクでさえ策として認めているのだ、ほぼ雪の案は通ったようなものだろう。
しかし。
「………」
(視線が痛いなぁ…)
隣席から痛い程の視線を感じる。
顔を見ずとも、其処にはくっきりと眉間に皺を刻んだ神田が座っているのはわかっていた。
だからこそ顔は向けずに笑顔を貼り付ける。
神田が嫌う任務内容なのは承知していた、想定の範囲内だ。
「じゃあドレス用意しないとね!」
「あ、もう必要な物は全部用意したから」
「そうなの?」
神田の否定を喰らおうとも、話を後戻りできないところまで進めてしまえば進む他ない。
それを考慮しての先手だった。
「コムイ室長に頼んだら、ドレスコードも舞踏会の招待状も全部手配してくれたから」
「コムイさんが?」
「怪盗Gの賠償金で嘆いていたのに、珍しいであるな」
「リナリーのドレス姿撮るって言ったら即決だった」
「「成程」」