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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



「笑いたきゃ笑えばいいだろ」



投げやりに言えば、くすりと雪の口元が弧を描く。



「笑わないよ」

「…笑ってんだろ」

「違うよ、これは」

「何が違うってんだよ」

「それって、私と一緒に仕事をしたいって思ってくれたから、そう言うんだよね?」

「………」



彼女の言う通りではあるが、素直に頷くのはなんとなく腑に落ちない。
しかし黙り込むのも認めているようなものだ。
その態度で充分だったのか、雪は晴天の下で目を細め笑った。



「嬉しい」



たった一言だけだった。
しかしその一言で、男との気に喰わないやりとりも今仕方抱えた思いも、全てが不毛に思えてしまう。



「…行くぞ」

「あ、待って」



くるりと背を向け歩き出す神田の後を、荷物を背負い直しながら雪が追う。
その姿を待つように歩調を緩めれば、隣を歩く彼女の笑みはまた一つ優しくなった。
空を仰げば青い晴天が広がっている。
昨日まではあんなに気に喰わなかったものが、然程今では気にならない。



「───あ。此処で聞いてもいい?」

「ああ」



不意に雪が足を止めたのは、一件の雑貨屋だった。
開放型のドアを潜り、カウンターへと向かう途中で雪の目に映ったのは、淡い花を模して作られた髪飾り。
三日前に目を止めた、あの蓮の花のネックレスと同じ作りに思わず足が止まる。



「? どうし───」



そこへ同じに足を止めた神田は、並ぶ装飾品を見る雪に口を噤んだ。
三日前なら、遊ぶなと一蹴していただろう。
しかし今はそんな気持ちは沸き起こらない。



「……雪」

「あ、ごめん。聞き込みだったね」

「…か、」

「え?何?」

「欲しいのか、……それ」

「……え?」



神田の口から出てきた問い掛けは、予想外のものだった。
耳を疑う顔で雪は神田を二度見した。
今、彼はなんと言ったのか。



「どうせ今日も一日中聞き込みなんだろ。少し足を止めたって変わらねぇよ」

「え、えと…?」

「見たけりゃ見ればいいだろ。別に…止めねぇし」



目線を逸らしながら素っ気なく伝えてくる神田の横顔は、雪には見覚えがあった。
それは居心地が悪い時や、照れ臭さを感じている時の顔だ。

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