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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人








"違げーだろ、サポートしかできねぇんだろ。お前らはイノセンスに選ばれなかった、ハズレ者だ"






神田の脳裏を過ぎったのは、昔にファインダーの一人に放った言葉だった。
言ったことさえ忘れていたが、雪の言葉と笑顔を前にした時、何故か不意に思い出したのだ。

サポートしかできないファインダーの連中は、所詮代わりの効く駒にしか過ぎない。
そう思っていた。
今でもエクソシストとの重要性を問われれば、迷わずファインダーを切り捨てられるだろう。

しかし目の前にいる彼女はどうだ。

当たり前に膨大な聞き込み調査をしていた姿なんて知らない。
偶に見掛けていた程度で、雪がそんな仕事を影でこなす姿は見たことがなかった。



(…違うな。見ようとしなかっただけだ)



よく雪と二人きりで組まされてきたが、一人を好む神田の傍に、彼女は必要以上には近付いてこなかった。
任務の度に当たり前に彼女の口から提供されていた情報も、物資も、恐らく裏で地道な作業が行われていたからこそ。
それが雪達ファインダーの"仕事"だ。

それを代わりに全て任されたとなれば、エクソシストだけでは手は回らない。
三日間ひたすら淡々と聞き込みに回る仕事も、面倒で代わり映えがなく、ゴールも見えずに苛立ちも募る。
それでも代わらず人々に笑顔を向けて、嫌味を向けられようとも愛想よく回る雪の姿勢は、いつかの神田が嫌っていたものだ。
だが、この場には必要不可欠なもの。

やろうと思えば神田にもできる仕事なのかもしれない。
しかし雪のようには上手くこなせないだろう。
そう気付いてしまったからこそ、バズの時のように鼻で笑うことはできず。



「だから必要になったら、ちゃんと呼ぶから。それまで休んでて」

「…いい、俺も行く」

「でも」

「これくらいで体力減らねぇし。黙ってりゃいんだろ」

「…守れるの?」

「ああ」

「拳も振り回さない?」

「…ああ」

「………」

「…んだよ」



渋々とだが了承すれば、物珍しそうな顔が見上げてくる。
凝視されるのは居心地が悪い。
自分らしくない行動なのは、神田自身もわかっていた。
それでも先程の男とのようなやり取りを知らない所でされるくらいなら、目の前で苛立っていた方がまだマシだ。

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