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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



「───また最後まで話聞けなかった…これで何度目?」

「知るか。俺を女と勘違いしたあいつが悪い」



結局男には逃げられ、仏頂面の神田と向き合う羽目になった雪は、本日何度目になるかわからない溜息を溢した。



「ユウは聞き込み向いてないんだから、宿で休んでていいよ。報告書でも仕上げてたら」

「もう仕上げた」

「本当に?」

「あれから三日も聞き込み調査してんだぞ。コムイへの報告もとっくに済んでる」

「ならユウの任務は完了でしょ。もう教団に戻っても───」

「お前の任務がまだだろ。コムイから加勢の許可は貰ってある」

「…シスコン室長め」



ただイノセンスの探索をするのに、エクソシストは二人も三人も要らない。
しかし現状、神田の他にアレンもクロウリーもリヴァプールの地に留まっている。
早く帰って来いとコムイが急かさないのは、愛妹がその任務に参加しているからだろう。
職権乱用とは、正にこのことである。

しかし加勢してくれるのはいいが、これではどう見ても足を引っ張っているようにしか見えない。



「でもなぁ…まだ今日は三十人しか話聞けてないし…」

「それだけ聞けば充分だろ。同じことを毎日毎日、成果あんのかこれ」

「成果を出す為にやってるの。ユウが知らないだけで、一緒の任務の時に百人くらい聞き込みしたりもしてたよ」

「…嘘だろ」

「本当です」



そんなに聞き込み調査が億劫なのか。
嫌な顔をする神田相手に、雪は笑顔を貼り付けた。



「ファインダーには普通のこと。エクソシストは縁のない仕事だから、驚くのも無理ないけど」

「…別に驚いてねぇよ。それくらい俺にもできる」

「やろうと思えばね。でもいいよ。エクソシストにはエクソシストの役割があるんだから、こんなことで体力削ってもらっても困るし」

「AKUMAは出ねぇだろ」

「出ない保証もないでしょ」

「………」



ああ言えばこう言うが、雪の意見は尤もだ。
とうとう反論ネタが切れたのか、黙り込む神田に雪の笑顔が作り物から感情を宿す。



「サポートしかできない私達だけど、それを私達がやることに意味はあると思ってる。ユウにはユウの役割があって、私には私の役割がある。そうでしょ?」



その言葉はいつかに聞き覚えのあるものだった。

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