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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



✣ ✣ ✣ ✣


「リッチモンド伯爵について?あの貴族は此処いらじゃ有名だぜ」



仕事休憩の一服とでも言おうか。
港で掻いた汗を拭きながら、刻み煙草を噛む男は興味深そうに雪に目をやった。



「知っていること、色々聞かせてもらってもいいですか?」



心地良い潮風が吹く晴天の船着場で、同じに晴れ晴れとした笑顔を向ける雪が問い掛けることは一つ。
イノセンスへと繋がるであろう、リッチモンド伯爵のことだ。



「いいけど…なんだい、あんたも社交界で伯爵狙いかい?」

「舞踏会のことですか?近々開催されるらしいですね」

「あれだけの金持ちさ、財産目当てで取り入ろうとする女は多い。しかしあんたは……もう少し良い物で着飾らないと、華が足りねぇなぁ」

「放っといて下さい」

「そういう可愛げないことも言っちゃいけねぇ。貴族の男ってのは、黙って後ろを二歩下がってついてくるような女が好みさ」

「アハハ、じゃあ尚更願い下げですネ」

「そうかい?女ってのは本性を現せば皆末恐ろしいもんよ。あんただって───」

「願い下げつってんのがわかんねぇのか、テメェの耳は節穴かよ」



嫌味な笑顔を貼り付けたまま茶化してくる男に、不意にぬっと雪の背後から現れた高い背丈が立ち塞がってくる。



「ち、ちょっとユウ」

「おお?あんたは素材がいいなぁ!そのくらい美人なら伯爵も目を止めるだろうよ」

「…あ?」

「げ」



強面と思われても可笑しくない表情をしていたが、それでも男に神田は美形、否、美女に映ったのだろう。
神田の額に青筋が浮かぶのを見た雪は思わず唸る。
悪い予感しかしない。



「身形は可愛げねぇが、そこそこのドレスでも着飾れば映える顔だ。背は…でけぇなぁ。モデルでもやってん」

「…ねぇ」

「あん?なんだって?」

「俺は、女じゃ、ねぇ!」

「ゲフぶゥ!?」

「わーっ!ユウストップ!ブレイクブレイクー!」



案の定、ぶちんと血管を切らせて拳を振るう神田を、後ろから羽交い絞めのように雪が止める結果となった。
それでも握り拳は男の頬へと既にめり込んでいたが。

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