My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「月一で舞踏会開くような性格なのに、やけに保守的だし。絵画を貸し出すなんて太っ腹かと思えば、カメラの設置は頑なに嫌がる。大事な時に不法侵入なんてあったのに、信用ならないと言ってた私達に任せて放り出すなんて、神経質なのか雑なのか…なんか引っ掛かるんだよね。色々」
「あの男の性格に問題があるだけなのでは?芸術趣味とは、よくわからないものですねぇ」
「…トクサに性格の駄目出しされたらもう終わりだよね…」
「ほう。言いますねぇ首キリキリされたいですか?」
「うわちょっとやめて私情でイノセンス乱用とかマダラオに怒られるからッ」
「いのせんす?ってなんだい」
「「「………」」」
頭上に?マークを浮かべながら首を傾げる青年に、雪とトクサの言い合いがぴたりと止まる。
加えてリナリーの視線も感じて、更に青年は首を傾げた。
「どうしたのさ、皆黙り込んで。呪いの言葉にでもなってるのかい、それ」
「そうではないですが…」
「なんでイノセンスが気になるの?」
「初めて聞いたものは、君は気にならないの?それだけだよ」
本当にそれだけなのだろうか。
イノセンスある所に怪奇あり。
彼自体の存在も怪しく感じる。
「じゃあなんでさっきは、あんな態度取ったの。顔見知りなのに知らないなんて」
「だから本当に知らないんだって。君のこと」
「月城雪。この名に覚えは?」
「ないね、初めて聞いた。ツキシロユキなんて面白い名前だけど」
「…雪がファーストネームなんだけど」
「ワオ、てっきりツキシロユキで一つの名前かと思ったよ!」
「「「………」」」
デジャヴ。
と言えばそれまでだが、なんとも奇妙な感覚だ。
彼の驚き様は、わざとらしいものには見えない。
しかしそのやり取りは、数時間前にしたはずのものだ。
本当に忘れていたとしても、名前を聞けば思い出しそうなもの。
しかしぽっかり雪との記憶だけ抜けているかのように、彼は其処に存在していた。
つい雪達の間で沈黙ができる。