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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



足元に広がるは、仄かなピンク色を宿す希少価値の高いマリーローズ色の大理石。
かつんかつんと響く足音が幾つも、先頭を行くリッチモンドについて歩いていた。
首を反らせる程に高い天井には、見事なシャンデリアが幾つもぶら下がっている。

まるで絵に描いたような立派な豪邸内装だ。



「凄く大きな屋敷ね…」

「お城みたいだなぁ…」

「この屋敷は私の曽祖父の時代に建てられたものでね。当時もこれだけの大規模な建物を造り上げることは、並大抵の財力では成し得なかったことなんだよ」

「…遠回しに金持モゴッ」

「へー!凄いですねッ」



笑顔でさらりと嫌味を放とうとしたトクサの口を、急いで塞いだのは雪の手。
金持ち自慢であることは雪も薄々感じている。
しかし今は此処でリッチモンドの機嫌を損ねることは、得策ではない。
物事は穏便に、動く絵画の真相を突き止めなければ。



「毎月舞踏会を開くなんて、貴族にしかできないことですもんね」

「まぁ、これくらいのことは。単なるお遊びだよ」

「でも凄く大掛かりなお遊びですよ」



巨大な広間を横切れば、周りを沢山の使用人が行き交っては飾り付けや家具の配置に追われていた。
舞踏会の準備に追われている、というリッチモンドの口実は本当だったらしい。
華やかに彩られていく空間は、つい雪とリナリーの目も惹いた。



「此処だよ。絵画はこの部屋に集めているんだ」



やがて案内されたのは、明るい広間とは打って変わり落ち着いたワインレッドのベルベット生地で内装された一つの部屋。
広間に比べれば小さなものだが、それでも首を反らす程に高い天井は変わりなく、円形に切り取られた部屋の天井は一面が硝子張り。
其処から差し込む陽の光が、まるでスポットライトのようにも見える幻想的な部屋だ。



「わぁ、素敵な空間ね…!」

「はは、ありがとう。絵画集めは私の趣味の一つでもあってね。ただ集めるだけでは芸がない。こうして飾っていれば作品達も喜ぶことだろう」



両手を合わせて歓声を上げるリナリーの目の前に広がる、幻想的な空間。
その窓のない高い壁には一面、様々な絵画が飾られていた。
まるで一つの個展のようだ。

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