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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



「あの、飼い主がいるんですよね?ならあまり乱暴に扱わない方が…」

「相手はみずぼらしい爺さんだ。構わんだろうよ」

「そんな言い方しなくても」



乱暴に扱われる猫を不憫に思ったのか、リナリーが忠告するも使用人は眉を潜めるだけ。
飼い主がどんな人物であれ、飼い猫であることには変わりない。
家族同然であろうそれを乱暴に扱われれば、飼い主も良い気はしないはずだ。



「ニ"ャー!」

「イダダ!この…ッサッサと出てけ凶暴猫め!」

「ニャッ」

「あ!」



バリ、と鋭い猫の爪が使用人の手首を引っ掻く。
痛みに気を荒立てた使用人の男は、あろうことか猫を怒りのままにぶんっと宙に放り投げた。
小さな体はあっという間に高く舞い上がる。
やがては重力に従って落ちてくるだろう、その様に誰もが頭上を見上げた。

その中で。



「っ…!」



雪は咄嗟に階段の上から、身を投げ出すようにして地を蹴り上げていた。



「雪っ!」

「おっと」



リナリーとトクサの声が重なる。
背中から宙を飛んだ雪の広げた腕の中に、ぽすんと落下する猫。
そのまま一人と一匹は、階段下の地面に落下した。



「大丈夫っ!?」

「いったー…はは、まぁ、なんとか…」



下が土であったことが幸いしたのか、痛みはあったが耐えきれない程ではない。
階段を駆け下りてくるリナリーを視界の隅に、雪は恐る恐る腕の中の猫に目を向けた。



「大丈夫?」

「…ニャア」



つい衝動できつく抱き止めてしまったが、猫は暴れなどしなかった。
様子を伺えば、まるで応えるように小さくひと鳴き。



(飼い主さんがしっかり躾けてるのかな…賢い猫だ)



使用人に捕まった時と比べれば天地の差の態度に、やはりあれは乱暴に扱われた結果だったのだろうと悟る。



「何してるんですか。猫なんて助けられずとも、自分で回避できる身体能力を持ってますよ」

「だからって助けなくていい理由にはならないでしょ。煩いなぁ」

「怪我は?なんともない?」

「うん、ありがとうリナリー」



呆れ顔のトクサにはジト目を、心配顔のリナリーには笑顔を返して、身を起こす。
抱いたままの猫はやはり暴れることなく、大人しく雪の腕に身を預けていた。

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