My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「惚けてんじゃねぇよ。変な物言いしやがって」
「何道端の通行人に噛み付いてんですか、神田。彼はAKUMAじゃないですよ」
「どうせ雪と話してるのが気に喰わないんでしょ。器が小さいんだから」
「本当ですね、全く」
「うっせぇ違ぇよ!」
うんうんと頷くアレンとリナリーに噛み付く神田はいつもの光景。
見慣れたものなのか、二人は噛み付かれても何処吹く風だ。
「大体そいつは───」
「あ、もう行かないと。連れがいるんだ。それじゃあ!」
「オイ待てテメェ!」
手首の時計を見たかと思えば、ぱっと身を翻し人混みの中へと去っていく青年。
燃える赤毛を見失うのはあっという間のことで、神田も止める術がなかった。
「行っちゃった…まぁいいけど」
「チッ」
「…何でそんなに虫の居所が悪いのかわかんないけど、他人にまであんまりカッカしな」
「あ?」
「………(その態度が疲れるんだってもう…)」
「黙ってても目でわかんだよ、喧嘩売ってんのかコラ」
「イイエ滅相モナイ」
「棒読みすんなムカつく」
「ごめんなさい」
「頭下げんなイラつく」
(じゃあどうしろと…!)
何故こうも彼は機嫌が悪いのか。
考えてみてもわからないし、教えてくれないのならやはりわからない。
今は何をしても無駄だと、雪は堪らず項垂れた。
負以外の感情をそう素直に出さない神田の相手は、時に根気がいるものだ。
「近付く相手に片っ端から雷を落とすなんて、迷惑極まりないですよ」
「神田の頭上はさしずめ雷雲、であるな…」
「本当、現実とは大違いね」
やれやれと肩を落とすエクソシスト組に、舌打ちをすると神田は空を睨み上げた。
頭上に広がるは、雷雲ではなく雲一つない晴天。
眉間の皺が深くなる。
だからこそ気分は悪くなるのだ。
何処までも続く、この清々しい程に青く憎らしい空を見ていると。