My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「いやぁ!無くした時は焦ったけど、見つけられてよかった!騒いでくれたツキシロユキのお陰さ」
「す、好きで騒いでた訳じゃ…」
「見たところ地元民じゃなさそうだけど。ツキシロユキは観光?」
「いや…と言うか私の名前、雪がファーストネームなんだけど」
「ワオ、てっきりそれで一つの名前かと思ってたよ。ユキ?」
「うん」
「聞かない名前だな。中国人かい?」
「ううん、私は日本人」
「日本?よく知らないなぁ」
見た目からして、年齢は神田やリナリーと余り変わらないだろう未成年。
気さくに話しかけてくる姿に、自然と雪の肩からも力が抜ける。
「まぁ小さな島国だしね。そういう貴方は?」
「僕は英国。この国の出さ」
「じゃあこの付近のことはよく知ってるの?それなら是非聞きたいことが───」
「ああ、ごめんよ。この辺りは詳しくないんだ。今日は野暮用がてら遠出にね」
任務の聞き込みができるかと張り切る雪に、青年は苦笑混じりに肩を竦めた。
「此処には滅多に?」
「来ないかなぁ」
「そっか…」
どうやら聞き込み調査はできそうにないらしい。
肩透かし感に思わず脱力する。
そんな雪とは対象的に、観察眼を鋭く光らせる者が一人いた。
「地元じゃねぇんなら、其処らの観光客とほぼ変わらねぇだろ」
一歩踏み出し、淡々と低い声を投げ掛けたのは神田。
「遠出にしちゃあ荷物が少なくねぇか。それじゃまるで近所の散歩にしか見えないぜ」
淡々とだが冷たい声。
鋭い神田の眼孔は、彼の姿を見逃さなかった。
周りを行き交う観光客に比べ、青年の身形は軽い。
確かに地元民と思われても可笑しくない姿だ。
「そうかい?荷物なんて一つあれば充分だろ。色んなものを抱えてた方が、いざという時動けなくなるってもんさ」
「…なんか…見た目ラビに似てるなぁと思ってたけど、中身も似てるかも…」
「本当ね」
どことなく気障な言い草に、アレンとリナリーが同時に頷く。
ラビといい目の前の青年といい、赤毛の男と言うのはこうもチャラけたものなのか。
呆れ笑うアレン達に対し、しかし神田の目付きは一層悪いものへと変わるばかりだった。